得した気分で店を出た。後で調べたところ、一つはチベタン・フルート(チベットの横笛)、もう一つはギャリンというチベットのチャルメラ系の笛であることがわかった。偶然だが、ネパールやインドの笛よりも、チベットの笛の方が自分の好みだということに気づいた。
考えてみると、ネパール・インド系の笛は竹製のものが多く、木製のチベット系の笛に比べて軽やかな音色である。私はどうもチベット系の落ち着いた、野太い音色に惹かれるようだ。
しばらく歩いたところで、なんとサーランギーを演奏している青年を発見! 演奏しながら土産物を売っている。バイオリンというよりも、中国の胡弓のように艶っぽくてちょっとハスキーな音色だ。
しかも装飾音を多用した陽気な音楽で、ときおり和音のように重なる響きが心地よいアクセントになっている。初めて見る姿に興奮しながら近づいてみると、四本の弦の太さが違い、高音の弦だけが金属製。これぞ本物だ。
肩から紐で楽器を提げ、音程を作る柄の部分を上、弦を擦って音を鳴らす胴体を下にして、アーチ型の弓を巧みに動かしながら演奏している。弓を返す度に、弦を擦る圧力でギーギーという噪音が混じり、なんとも味わい深い。
「こんな楽器はどこに売ってあるの?」と聞くと、「これはぼくが作ったもの」と言って、背中にかついだ袋から、小さなおもちゃのようなサーランギーを出してきた。
例の弦が針金のお土産用だ。そこで、彼が弾いていたサーランギーを指さして「私はこれがほしい」と言うと、すごく驚いた顔をした。
「いくら?」と聞くと、しばらく考えてから「六〇〇〇ルピー」という答えが返ってきた。
ネパールの平均月給が八〇〇〇ルピーくらいと知っていたので、「高い! 買わない」と言って去ろうとすると、「待って、待って、五〇〇〇ルピー」と食い下がる。