ところがある日、「本なんか、もう買わんで(買わないで)いい!」と母が言い出し、私の一番の楽しみを奪われてしまったのです!(まさに「ああ無情!」)
そんな絶対的権力を持つ母にも苦手なものがありました。それは雷です。雷が鳴り出すと母は異常なほど怖がり、布団をかぶって震えていたのを思い出します。会津若松への修学旅行六年生の春、修学旅行で福島県会津若松に行きました。
記憶に残っているのは、五色沼の美しさと、野口英世記念館と、旅館で聞いたウグイスの声です。旅館の部屋に入ると、窓からウグイスの声が聞こえてきました。
「ホーホケキョ!」
私も真似をして、「ホーホケキョ!」と口笛を吹くと、「ホーホケキョ!」とウグイスが返してくれたのです(そんな気がしただけなのかも知れませんが)。
嬉しくなって、また、「ホーホケキョ!」「ホーホケキョ!」と、夢中になって繰り返していると、いつの間にか部屋には誰もいなくなっていて、集合時間にずいぶん遅れたことを覚えています。
写真(186ページ下段)を見ると、みんな楽しそうに笑っています。その中の特別小さい子が私でした。
知り合いが来ると、母は私を指さしながら、「この子は誰に似たのか小さくて、小学校入学のときには一メートルの物差しで測られたんですわ!」と笑いながら話しているのを聞いて、幼心に傷ついたものですが、確かに私はとびきり小さい女の子でした。
仕事も遅く、学校の成績表には、「作品が最後まで仕上がらない」といつも書かれていたものです。運動神経もなくのろまな私でしたが、仲間からいじめられることもなく、大事にされていたような気がします。
日曜日には、父や母の自転車の後ろに乗って隣町までお花見に行ったり、たまに街で上映される映画に行き、帰りにアイスキャンディーを買ってもらい、途中にある川のほとりで食べたり、夏には電車に乗って海水浴に行ったり、母の実家に泊まりがけで出かけたりと、ささやかながら楽しい出来事もありました。
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