第二章 怒れる上司と見守るアシスタント
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「うーん。まずは課長から解放されないと身動きがとれないですね」
山沖は発注ミスという言葉に敏感に反応して、ちらちらと川原の方を見た。川原は山沖の視線を感じたのか、うつむき加減になってほおをまた赤らめている。竹村は隣の川原の仕草が目に入らなかったみたいで、はしを手にしたまま俺の方を見つめてきた。
(松岡さん、早く名案を言い出して)
という感じで。
「じゃぁ、まずは田所との和解を早急に済ませて、次に発注ミスのフォローに移ろう」
「で、どうするの?」
竹村が身を乗り出してきた。川原もつられて俺の方に半身を向けた。山沖は腕組みをしてテーブルの上の食いかけの料理を見ている。
「山沖、最初に確認しておくけど、身動きが取れれば、後のことは目処が立つのか?」
山沖は腕組み状態で足を揺すりながら、「ふー」とひと息吐くと話し始めた。
「ええ、何とかなります。工場にいる同期が生産管理部長にかけ合ってくれて、昨日、急きょ増産してもらえる連絡がありました。得意先にもすぐ連絡を入れて、分納でも良いという口約束は取ってあります」
話の区切りがつくと、天井を見上げて「でもな……。課長がな……」語尾が弱くなっていく山沖がいた。
「そうか、それなら好転させようじゃないか」