第二章 怒れる上司と見守るアシスタント
2
「いや、何とかしてやりたいんだが、いい考えが浮かばなくてね」
誰に言うともなく、腕を組んで言葉を吐いた。川原はじっと俺の方を見ている。多分、竹村から心理作戦という話を聞かされているのだろう。期待をにじませたまなざしだ。
「そうだ。川原さん、いきなりこんなことを訊いてびっくりしないでほしいんだけど」
「出た出た、私の時もそうだったのよ。松岡さんたら、意表を突くことを言い出すの」
竹村が間に入り込んで、勢いが一瞬削がれそうになったが、そのまま突っ込んだ。
「川原さん、山沖のことが好きかい?」
「えっ……」
竹村の方が驚いて、一層顔を赤くしている。
「あのう、それって、救済作戦に何か関係があるんですか?」
川原は少し顔を赤くして聞き返してきた。
「いや、今は特に関係ない。ないけど、山沖は君のことが好きだ。君を思う山沖の愛が今回の行動を起こさせた。だから、一応、友人として君の気持ちを知っておきたいんだ」
竹村は俺と川原を交互に見ている。川原は俺の視線を一度そらすと、ひと呼吸おいて視線をもどしてきた。
「好きですよ。山沖さんのこと」
照れ隠しにセミロングの髪の毛をかき上げていたが、川原ははっきりと言った。
「そうか。今の話はここだけだ。今回の問題が解決したら、告白してやってくれ。山沖は口べただから自分からは告白できないよ。だから体を張って告白しているんだと思う」