お前が今夜やるべきことは、心を入れ替えることだ。つまり、自信を持てということだ。『アシスタントの川原さんのために、俺はがん張るぞ!』と彼女の前で堂々と宣言しろ」
一気呵成(かせい)に口から思いつく言葉を並び立てた。「ふー」とひと息吐くと、残っていたガラナ酎ハイを一気に飲んで、「もう一杯!」と叫んでいた。
山沖は、「えっ?」というくちびるの形のまま固まっている。川原は最高に顔を赤くしている。竹村は芝居でも見ているような顔つきで山沖の台詞待ちをしている。
「こら、山沖! このガラナ酎ハイを一気飲みして、うそでも何でもいいから叫べ!」
少し乱暴だったが、山沖をにらんで無理強いした。山沖はひざを揺すっていたが、俺からジョッキを奪い取ると、一気に飲み干して天井に向かって叫んだ。
「俺は、アシスタントの川原さんのためにがん張るぞー!」
叫び声の終わりを待って組んだ両手の人差し指を山沖に向けた。勇ましいよろいかぶとの若武者が現れていた。川原にそのまま方向を変えると、女剣士に入れ替わっている。
酔ったせいか、手がぶれて竹村の方にも指が動いた。まあ、酔っていたので覚えていない……。とにかく、明日に向かっての準備は整った。
【前回の記事を読む】俺の視線を一度そらすと、ひと呼吸おいて視線を戻し「好きですよ。山沖さんのこと」と…