山沖の肩をたたいて笑って見せた。電池が切れた電動人形のように固まっていた川原と竹村も手に持っていたはしを置き、強ばっていた顔をほころばせてテーブルの中央に顔を寄せてきた。
「山沖、まずはお前の卑屈になっている気持ちを好転させる。そして、明日俺が田所を説得する。結果は任せろ」
「俺の気持ちを好転させるって、どうやるんです?」
山沖は組んでいた腕を解いて不思議そうに俺の顔を見た。テーブルの上に身を乗り出していた二人も同じような顔をしている。
「山沖、お前は俺とペアを組んでからの受注率は何パーセントだ」
「はあ、確か百パーセントですよ」
面食らったような顔で山沖が答える。
「そうだよな。それなら事務処理のミスはどうだ? 今回の件を除いてだぞ」
「それならノーミスですよ。まあ、これはアシスタントの川原さんが有能だからで、僕だけの力じゃありませんから」
照れ隠しに頭をかきながら、川原をちょっと見て山沖は言った。
「充分じゃないか。お前は有能な営業マンだ。一回ぐらいのミスで落ち込むな。逆にミスをカバーできるようになってこそ、本物だ。今回のことはチャンスだと思え。ただ、相手が悪すぎただけだ。それは、明日俺が何とかするから。お前は田所に花を持たせることだけ考えろ。