トップアスリートを目指す妹
中学に入ると急に試合が増え、行動範囲も広くなった。スイミングスクールからは必ず誰かが引率にやってきた。
小学校の頃は、父や母も来ていたが、中学生になった頃から、親がついてくるということが嫌になった。大きな試合のときにはこっそり来ていたが、小さな試合のときには試合があること自体、親に報告しなくなった。
「来てくれなくてもいい」と言ったこともある。そのときの両親の寂しそうな顔は未だに脳裏にある。その頃だった。国内にも世界にもとんでもなく素晴らしい選手がたくさんいることに気がついた。自分はまだまだだと思い知らされた。
育成選手となりナショナルトレーニングセンターでトレーニングメニューをもらうようになったのもその頃だった。
いくつもの見たこともない機械にかけられ、動けと言われた通りに動き、分析が行われ、そして、改善点が指摘される。
愛莉は肩関節が柔らかく可動範囲が広い。股関節がしっかりしていて、安定している。ふくらはぎの筋肉は白筋が多い構成になっていて、比較的短距離に向いている。その愛莉の特性を最大限生かすための練習メニューが組まれる。
基礎体力を作り込むことから、泳ぎ方の指導まである。繰り返し繰り返し、検査をし、練習で身体に覚え込ませ、成果を見る。次の改善点を探す。首の位置、手のひらの向き、バタ足の回数、細かなところまで再三チェックが入り、修正される。
ノーブレスでいられる時間が長くなり、飛び込み台からの初動の伸びが良くなった。タイムに直結した。