2つ目は、本書が、教師の心理と行動を関係づける「セルフ・エフィカシー」をポジティブに教育実践へ応用する入門書でもあるという点にあります。
今、教職への入職後、数年で辞める若い教師が増えています。様々な理由からやり甲斐が見つからず諦めて教壇を去っていく若い世代の教師が多くいます。また、中堅やベテランの教師でも若手と同じように苦悩しているケースも少なからずあります。
「セルフ・エフィカシー」というのは、自分の授業が上手くいっているかどうかを感じる教師の主観的認知を指し、日本語では「自己効力感」と訳されます。本書では、個人が感知する失敗感や成功感、あるいは挫折感や達成感などをも含めた比較的幅広い概念としてこれを捉えています。
終わりになりましたが、本書を最後までお読みになることによって、「インストラクショナル・スピーチ」と「セルフ・エフィカシー」の関係を総合的に捉えていく必要性をご理解頂き、新たな枠組みと視点から英語教授に関するヒントが少しでも得られんことを期待して止みません。
現役の教師や英語教育関係者の皆さん、そして英語教育に興味がある一般の読者の皆さんにとっても、この本がこれからの日本におけるバランスのある英語のバイリンガル授業を考えていく契機となれればこの上ない喜びです。
2024年1月31日
表 昭浩
注[1]日本の英語教育は、国策としてはあくまでも外国語教育であって第2言語教育ではありません。その意味で、この言葉は多少の矛盾を孕んでいますので括弧付けとしています。その理由についてはあとがきでも少し述べています。
【前回の記事を読む】英語を話したいのであれば、私たちの母語、身近な日本語に頼り過ぎないことが重要