健康や生活を脅かす夜間頻尿とどう向き合うか
2.夜間排尿回数が健康のバロメーターになる
▼ 診察室で見た夜間頻尿の示唆するもの
このように、夜間頻尿の状況を診察室で俯瞰してみますと、夜間排尿回数は、短期的には活動水準の低下、長期的には老化の進行を反映するものと思われます。なぜそうなるかは、高齢者の生体機能の仕組みを見ていけば、理解できるのではないかと思います。
無為に座っている時間が長いと、活動水準が低下し、うたた寝もしがちになり、夜間睡眠時に中途覚醒が起きやすくなり、夜間頻尿の状態になります。不健康サインで無気力、身体活動の低下などが原因で、長期化するとプレフレイルの状態になります。よって、夜間頻尿の状態は健康状態や健全な生活の目安になるのです。
危険信号を察知して、何人もの人をデイケア、デイサービスへの道筋をつけました。例えば、80代以上は、治療してみて効果のない夜間頻尿が3〜5回の場合は、すでにプレフレイルに入ってないかチェックする必要があると思います。自由研究の調査でわかったことは夜間頻尿の状況で潜在的な支援、介護の必要な兆候を測ることができそうだということです。
近未来では、ウェアラブルIT端末で通信された患者データをAIが判定し、健康を支えるようになるかも知れませんが、その判定材料の一つに夜間頻尿の状態が加えられ、健康のバロメーターとして高齢者の生体機能を支えるようになるような発展があると確信しています。個人的にはスマホやスマートウォッチで自己管理する時代がそこまで来ていると思います。
3.老後の常識! 日常生活を自己管理
多くの高齢患者を長年見聞きしていると、健全な老後生活が見えてきます。そこに健康志向を持続させる自己管理の重要性を知ることができます。それを行っている患者さんは決まって夜間頻尿から解放されています。その秘訣を考えてみました。
▼ 退職後の生活様式が老後を決める
仕事があり、リズムのある生活を送り、活動水準が高ければ睡眠もよくとれるのが普通です。しかし、退職後は規則的な生活リズム(ルーチンワーク)がなくなる人は、活動水準が下がるので、生活習慣病等がひそかに進行しやすく大病につながりやすい傾向にあります。そのうち老化の生体機能の劣化現象として肥満や筋力の低下に生活習慣病が加わり体力、代謝量が落ちてきます。