自己心理学から見た十二支縁起の意義

ここで、僕が考える十二支縁起の意義、重要性を指摘しておきたいと思います。

(人の心の中に起こる)

(一)   自我という錯覚形成とその再生の心理的メカニズム

(二)   苦の悪循環が形成される心理的メカニズム

(三)   際限の無い欲望形成の心理的メカニズム

 また間接的ではありますが、行為とそれに伴う感情の心理から、

(四)   人間の悪い行為を生み出す心理的メカニズム

 を示していると考えられます。人間の悪事は、際限の無い欲望によってもたらされると考えられるからであります。そして悪い行為を無くせば、善い行為へと変えられる可能性があります。

これら四つの形成メカニズムが一つにまとめられ十二支の円環として示されているのが、十二支縁起であります。これらのことから、欲にまみれた自己を浄化するという自己変革が求められることになります。

ゴータマ・ブッダが座禅という瞑想修行によって悟りを得たように、苦を無くすための実践的方法論こそ、当時としての自己変革の具体的な方法論であったと考えられます。 

凡夫と呼ばれる者でも、権威や先入観にとらわれなければ、気づくことのできるものがあるような気がします。古い文献にとらわれずに十二支縁起の解釈を試みることで、自我と苦と欲との関係が見えてきました。古い文献に沿った解釈では、現代においても合理的に理解することは困難であります。それが何を意味するかは明らかであります。

けれど、仏教関係者がそれを公言することは、ためらわれることと思われます。あえて凡夫である立場の者が単にたわごととして公言するならば、許されるのではないかと勝手に考えた次第であります。つまり、古い文献にある十二支縁起の内容は、誤って理解された可能性があるということであります。

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