第一章 十二支縁起の新解釈
アーナンダと十二支縁起
この「大縁経」の導入部のエピソードを、凡夫による解釈で、以下に示してみたいと思います。アーナンダは、ゴータマ・ブッダに次のように言いました。
「不思議なものです、尊師よ。驚くべきものです、尊師よ。
この縁起とは、何と深遠であり、深遠であるように見えることでしょう。
けれど、私には一目瞭然のもののように思われます。」
すると、ゴータマ・ブッダは、次のように言いました。
「アーナンダよ。そのように言ってはなりません。
アーナンダよ。そのように言ってはなりません。
この縁起は深遠であり、深遠であるように見える、などと。
アーナンダよ。この縁起の法則を知らず、理解しないことによって、人々は、糸がもつれ絡まったようになって、腫れ物におおわれたようになって、ムンジャ草やパッバジャ草のようになって、悪行や苦悩や不自由な状況の繰り返しから抜け出ることができないのです。」
このことからアーナンダは、ゴータマ・ブッダが説いた十二支縁起の内容を正確には理解することができなかったと推測されます。たぶん常識的な理解の範囲を超えておらず、その後に初期仏教経典として文献化されたものと思われます。
つまり、アーナンダが理解し記憶したことがそのまま伝えられたということは、残念ながらゴータマ・ブッダ亡き後に十二支縁起そのものを理解できた弟子は誰もいなかったと考えられます。