【前回の記事を読む】地元で高校時代の担任に再会し、「思い出しくもない過ち」の話になった…それは僕が当時の彼女を妊娠させてしまった話で…
第四章
僕はこの三年間、人とできる限り接することなく生きてきた。だから、僕の心や性格がタフになったとか、そういうことではない。それなら、どうしてこんなに大人に大きな声で立ち向かうことができるのだろう。
それは、きっとあの頃よりも切羽詰まった状況にないからだ。あの頃の僕は、こんなに人から叱責されて、こんな事態になって、いったいどうしよう。僕はこの先どうなってしまうんだろう。怖い。そんな気持ちで胸がいっぱいだった。
でも今は違う。きっとなんとかなると思っているのだ。僕はこの三年間の間で、高校生の分際で彼女が妊娠したという事実に、耐性をつけてしまったのだ。僕はあの頃ほど、自分事として遥香のことを考えられていない。
「すみません。大声を出して……」
「ああ、いやこちらこそ。緑川のお母さんも、まだ野上のこと許していないだろうし、会いに行くのは難しいかもな」
「そうですよね」
やはり自分はまだ遥香の両親に許されていない。三年経ってこれなら、きっとこの先も許されることはないのだろう。それは想定内であるが。
「まあでも、ご両親に会わないようにこっそり会いに行けばいいんじゃねーか?」
「え?」
「きっと今日あたりは二人とも仕事だろうし、こっそり会いに行けばいいよ」
谷岡先生は、僕らの担任だったときとなんら変わらない、優しい微笑みを見せた。
「緑川もお前が会いに来たら、きっと喜ぶだろうな」
「そうですかね? 僕、三年も会いに来ていないし、ずっと逃げたままで」
「問題ないよ。緑川はそういうお前のこともきっと全部見て、知ってる。全部含めてお前のことが好きなんじゃないか?」
谷岡先生の言葉にほっと胸が落ち着いていくのを感じる。彼の僕を想う優しさゆえの発言だろうか。実際にはそうではないかもしれない。それでも、はっきりと言ってくれたおかげで、なんだか本当に遥香が自分を迎え入れてくれるんじゃないかと、自然とそう思えた。