【前回記事を読む】トランクに置かれた紫色の風呂敷包み。「お客様の忘れ物?」上から叩くとコンコンと音がする。結び目をほどくと、中には…
2章 共同生活者たち
翔太は助手席に置いてある私物を取り出すためにドアレバーに手を掛け、扉を開こうとした。
しかし鍵がかかったように開かない。鉄部が密着しているようだった。片足をボディに立て掛けてハンカチを介して両手でドアレバーをエイッと引くと、グシャとした音と共に扉が開いた。
ドアのフレームは白く凍りつき、室内は冷気で充満していた。
翔太は腰を折り、後部座席にある木箱の蓋を急いで閉じ、その後、風呂敷で隅をきちんと折り木箱を包んだ。
ゴクリ。翔太は生唾を呑み込んだ。いったい何が起きたのだろう。
グッキー君は前方のボンネットの上にピョンと飛び乗ると、何かをチェックするようにゆっくりとした足取りでテクテクと歩いている。
「車体がかなり冷えている。きっとその木箱から発散された冷気が原因だよ」
車内のアナログの温度計の針は最低温度を指していた。ハンドル、シート、運転席前面の計器盤には一面に霜が張り付いている。
「一瞬にして冷却されたってことだよ」
そう言ってガッキー君は風呂敷に包まれた木箱を見つめた。
アパートの玄関扉を開け、無言の二匹と一人は室内に入った。
「この木箱は明日、営業所の落とし物保管庫に入れておく」十畳ほどの居間のテーブルの上にポツリと置かれている木箱を見た翔太は首を捻った。
「どこからかやって来た手紙には、他の者に渡してはなりませんとあった。翔太がこの部屋に保管しておくべきだ」