1章 不思議な木箱

司令長官室にある巨大モニタの映像には、一面にわたり氷で覆われた景色が広がっていた。マゼラン銀河第三番惑星のどこかの街をドローンのカメラが上空から見ている映像だ。モニタの下部に、『作戦開始一年後』と表示されている。その街には生物の動きはない。映像には冷え冷えとした氷の景色が次々と展開されていった。

密集している住宅の屋根や壁はどれも白く厚い氷で覆われている。軒下には太い氷柱が連続して、舗装された広い道は風が吹きつけて雪が舞い、遠くまで見通すことはできない。街路樹は吹きつける雪に白く覆われている。建物、街路、樹木は確かに映像の中に映し出されているのだが、生活者の影はどこにも見当たらない。

「そろそろ良い頃合いだ! この星の生物がどのような状態なのかを調査しなさい。第三調査部隊、出撃せよ」

メロウ星、戦略司令長官室の中央にあるデスクから女王が命じた。壁際には背筋を伸ばした数人の軍服姿の者が整列して前を見ている。

宇宙戦艦から第三調査部隊が飛び立った。厚い鋼板に覆われた流線形の物体が十機飛び立った。氷に覆われた星のいくつかの地点を調査するためだ。調査隊は母船からゆるりと音もなく上方に向かった。一週間後、調査を終えた第三部隊は帰艦した。

「右側の映像の気温はマイナス三十度です」

司令長官は直立したままモニタを指さした。この部屋には二台の巨大モニタが並んで設置されている。右側のモニタは現在の景色。左側は一年ほど前の景色。同じ場所が映し出されていた。しかし、別世界の映像、同じ場所とは思えない景色があった。ドローン映像は、正確なプログラミングにより狂いのない位置取りで、マゼラン銀河第三番惑星の同じ場所を映し出している。