一年前の映像では生物が建物の周辺を歩いていたり、沢山の子供たちが遊んでいたりしている。樹木は青々と茂り、広い道路は遠くまで続いている。しかし、他方の直近の映像には雪が舞い、冷たい風が吹きすさぶ寒々しい氷の街が映し出されている。生物の動きは一切ない。人工物が氷に覆われ、吹き荒れる乱吹が視界を遮り、遠くまで見渡すことができない。
「家の中はどのようになっていた」
ロングドレスを纏った長い髪の女王は満足そうに何度も頷くと、冷ややかな声を出した。
「生物はすべて絶滅していました。作戦開始、半年後には、暖房のためのエネルギー供給は完全にストップし、食料もなくなり凍死したと思われます」
モニタの前で直立した司令長官は緊張気味に話した。
「作戦は、女王様がお立てになった計画通り着実に進んでいます」
「よくやった。長官に勲章を授ける、これからも私に忠誠をつくしなさい」
頷く長官を見て女王は続けた。
「上空に散布したウロコ粒子をすべて回収する。太陽光を一年前の状態に戻し、この星を我々の植民地とするために再生する」
小さな顔、切れ長の瞳と鋭く伸びた耳。女王の薄い唇は耳下まで裂け上がり薄く微笑んでいる。