1章 不思議な木箱
なぜ気温の低下が起きているのか、この現象は直るのか、以前の暮らしに戻ることができるのか。国民の不安は日を追うごとに大きくなった。
日常の活動をすべて停止して家に閉じこもり、残りわずかなエネルギーにより暖を取り、わずかな食料を前に不安な気持ちが限界に達しようとしていた。その間も、太陽光の減少は進行し、作物は枯れ果て、交通網は遮断された。
気温の低下の原因が判明したとメディアが伝えた時には、居住地から大きな歓声が上がった。原因が分かれば対応方法を考え出し、それを実行に移すことができる。ほのかな光が目の前に現れた瞬間だ。多くの国民は緊急防衛チームの窓口に連絡を取った。一刻の猶予も許されない自身の状況を伝え、次の展開を急がせるためである。
しかし、その後の緊急防衛チームからの発表はもたついた。差し迫った状況の中で、一発必中の手段を確定させる科学者の意見が折り合わなかったためだ。
効果的な手段がない中での最善策はどうあるべきかの意見を見出せないでいた。
『反射板を爆発により破壊し拡散する』これが最終方針となった。巨大ロケットを十台製造し、強力な爆弾を搭載しロケットは発射された。
太陽光を遮蔽している特定物質を除去するために飛び立ったのである。ロケットを自爆させ、その特定物質を破壊、或いは拡散させて太陽光を取り戻し、その星を元の状態に回復する。
文字通り運命をかけた作戦だ……。