1章 不思議な木箱

─氷の世界は一気に広がり、そして誰もいなくなった。女王は次なる植民地を手に入れようと画策した……。

メロウ星から一機の調査隊が飛び立った。目的は自らが住んでいるこの星が荒涼として生活不可能な星に変貌した時に備え、移住する星を探すためである。

今のところ緊急に移住する必要性に迫られているわけではないが、すでにいくつかの星を征服し支配下に置き、植民地として、移住が始まっている。

女王は移住地を確保しようといくつかの星を征服した。女王が暮らすその星が今後も存続できるかどうかは女王さえもよく分からなかった。

地殻変動が活発になり、いつの日か、手に負えなくなってしまってからでは遅いと女王は考え、前もって行動する必要に迫られていた。

植民地として相応しいか否かは女王が判断する。その基準は三つ。

はじめにその星の生物を調査する。

どこにどんな生物が生息しているのか。生物の体力と能力はどの程度か、生物は何時に起きて何をするのか、その目的は何か、考え方に特徴があるのか。

また、エネルギー源とその補給ルートはどのようになっているのかを、時間をかけ丁寧に把握する。

次はその星の持つ力。つまり、軍事力について調査を行う。

女王の命を受け出撃した兵隊にどんな反撃が起きるのかを想定する。どこにどんな兵器があり、その影響範囲はどの程度なのか、征服するために必要なデータを細部にわたり調査する。

その星の各地区で発行されている出版物とメディアが映し出した映像から概要を把握する。膨大で小出しの情報をつなぎ合わせ全体像を把握するため、その解析については女王の持つ最新型のAIが活躍する。

過去から現在までの軍事力の推移について詳細な解析が行われる。

いつ頃その兵器が開発され、どのように改良され進化してきたのか。また、社会においてその軍事力の及ぼす影響について、最新型のAIは数日中にレポートとして女王に提示した。

この時、女王が質問するであろう問題点については、その対処方法まで含めてパーフェクトに分析されている。

成果品は分厚い事典ほどの厚さなのだが、女王はコーヒーを飲みながらペラペラと眺めている。飲み終えるまでにはそのすべてを理解する。

最後の調査は、環境チェック。

征服後の移住地にどのような暮らしが待っているのかを予測する。これは女王自らが行う。植民地として的確か否かを調査する。