この三つのステップを経たのちの女王の下した結果に誰一人として反対する者はいない。メロウ星の民族は集団ごとに一定の領地を持っており、その領地の中で食料を育て生活を維持している。

一集団を形成しているのは一世帯十人ほどで十世帯規模、つまり、約百人で一集団である。集団の結束力は固く自立心も強い。

しかし、他の集団に対しては必要以上に警戒心が強く溶け込むことができない。このため、交渉役は長老の役目となっている。

女王の住む星は月ほどの大きさを持ち、表面は一面、氷で覆われている。星の中心部ではマグマが周期的に活発化していて、地表面に噴き出している。

近年の傾向として噴出するマグマの多量化が問題視されている。大規模な爆発が居住地近くで起きてしまうと、長老の命により、移住地を探す旅に出なくてはならない。

噴出したマグマにより、育てている肉植物が被害を受けてしまった時には多少の食料ストックを持ち、食物育成のため、自身の生のため、新たな土地を求めて旅に出る。

他の長老の治める自治区を避ける必要があるため、旅は数か月に及ぶ。その期間は長老同士の助け合いの精神で食料と居住は保障され、生活には取り立てての不自由はない。

しかし、百名ほどのグループをいつまでもその地に留まらせることは、争いごとの元になる。食料のストックも無尽蔵にあるわけではない。

情に頼り、その地に居続けることはできない。かくして、長老の率いるグループは争いのない土地を求めて、また旅に出るのである。

食料自足のために、民族は肉植物を育てる必要がある。肉植物はこの星の生物の主食であり栄養源だ。

氷の上に種を蒔くと数日で成長し、十日もすれば幹は数メートルに達して枝が分かれ、その先に分厚い青色の葉をつける。

その星の生物は葉をもぎ取り、表皮を剥ぎ、みずみずしく柔らかな果肉を食べている。薄甘く栄養価は高い。

しかし、注意点がひとつある。幹の先端には鋭い牙を持った口があり、近寄った者を攻撃する習性がある。

このため、口の中にある赤い目に見つからないように下方面から近づくことが必要なのだ。決して目を合わせない。これはこの星の生物の常識となっている。

メロウ星の絶対的な権力者である女王は、自身を支えるため組織を構築していた。直接の配下には司令長官を置いた。女王に次ぐ権力者である。

専門分野についてはそれぞれ別々の組織を置いた。科学技術部長官と軍事部長官である。重大な問題が発生した場合はこの三名の長官が意見交換して方向性を決め、その後に女王に提言する。

  

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