【前回記事を読む】女王の魔の手が次の惑星へと伸びていく。彼女が標的とする惑星の3つの条件とは?

1章 不思議な木箱

女王の住むこの星の地殻変動が今後活発化して滅んでしまうのか、それとも現状を維持して今の暮らしが続いてゆくのかについては、はっきりとした答えが出ていない。

女王が作り出した万能型AIに、百年から二百年先にどうなるのかを聞いてみると「九十%の確率で存続している」と答えが出てきている。

このことから緊急に舵を切る必要に迫られているわけではないが、危惧の念を拭い去ることもできないでいる。

図らずも来るであろうその時に備えるべきと女王は考えている。

移住地候補の星の探索に出たメロウ星の調査隊は、女王の持つ二つの木箱のうちのひとつを携えて任務を遂行していた。

敵からの攻撃を受けた場合や不測の事態に陥った場合に自衛したり、敵を攻め滅ぼしたりするためにと女王が手渡した木箱だ。

木箱に住み着いている二匹の竜の能力に疑問を持つ者は誰もいない。女王の宝物であり、必要不可欠な物。厄介な争いごとも、たちどころに女王の思いのままに解決する力を持った木箱だ。

しかし、その調査隊はその木箱と共に故郷の星に戻ることは叶わなかった。

全滅してしまったのだ……。

水と緑に覆われた星にその調査隊は舞い降りた。自身が暮らす星と比べ圧倒的に大きく、かつ多彩な自然があった。約一か月間の調査の結果、その星の両端部にある氷の大地は故郷の星と同様な景色が広がっていて、生活上の問題点は少ないと思われた。