どこからともなく灰色の雲が割り込んで、あたり一面に広がった。その雲は厚みを増し、ごつごつと天高く盛り上がっている。
隊員らはその光景に見とれ、この星の美しいダイナミズムに思わず引き込まれていた。
真っ青な空に湧き出るフワッとした白い物体が自然発生して大きくなる様に、惑星の生物たちは気持ちが高ぶり、その光景に見入っていた。
白色の塊は徐々に調査隊の待機している上空に覆いかぶさるように広がり、周辺は一気に薄暗くなった。
やがて一本のギザギザした光がピカリと上空を貫いた。その直後、光を追って大音量のゴーという音が薄ら寒い振動と共に駆け抜けた。
雨宿りしている大木が上部から真っ二つに裂け、枝の先端部は真っ赤に燃えていた。
調査隊は危険を察知し、巨大な石がそそり立っている岩場を通過し、海上に向かった。
運の悪いことに、その進行方向は雷雲の進路に一致していた。頭上の暗闇が不穏な気配で降下し、周辺の視界は悪化した。土砂降りの雨が容赦なく襲い、近くで雷が鳴り響いた。
さらに高度を下げた調査隊は、海面の直ぐ上をフワフワと進んだ。大粒の雨の中を稲妻が走り、轟音が鳴り響く。
機内の計器はショートしメモリを指す針がぐるぐる回転している。この初めての経験にリーダーは何もできなかった。
「いったい何が起こっているのか……」
その時、暗闇の中から発せられたギザギザの光が、一瞬にして調査隊が乗った機体を貫いた。
光の通過点にいた機体は真っ赤に燃え上がり爆発し粉々に砕けた。
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