石見

出雲と石見の一番の違いは、「ことば」である。出雲弁が東北訛りのズーズー弁であるのに対して、石見弁は文化的に近い広島や山口のことばの流れをくんでいる。これほどはっきりとことばが違うのも、ふしぎなことである。

石見の古代をこの目で見ようとするならば、くにびき神話で引っ張ってきた土地をかける杭として使われた、三瓶山に行ってみることをおすすめする。

そこには「三瓶小豆原埋没林(あずきはらまいぼつりん)公園」があり、約四千年前に三瓶山の噴火と土石流で残された、スギを中心とする埋没林を見ることができる。高さ十メートルもあり、黒光りする大木が立っている姿は壮観だ。縄文時代の姿を想像することができる、異空間である。

三瓶山は、現在はレジャーの場としても人気がある。最近はグランピングという施設も、期間限定で整備されている。自然派の私は、コンセントのあるテントで過ごすことに抵抗感があったが、昨年の夏、家族が予約したので、ここで一泊した。気軽にアウトドアが楽しめるのは、初心者にとって便利かもしれない、と思った。

私がここで期待したのは、星空だった。久しぶりに天の川を眺めることができる、と子どものように胸を躍らせていた。

ところが、昼間は晴れていたのに、夕方になると山頂から雲が降りはじめ、あたりが白くなってしまった。これでは今夜の星空は期待できないな、とちょっぴり残念に思っていた。