遊行期(ゆぎょうき) ―私の場合、七十歳以降。
ものの本には「人生の終焉に向けて準備、この世に対する執念をなくし、巡礼を通して死ぬ場所や悟りを求める時期」とある。さらに、「居住地すら捨てて物乞いとして遊行」とまで書いてある。
古稀を迎えるにあたり、生まれ育ち、また老後帰国してから過ごした杉並の実家を解体、整地して売却。東京の西部、多摩ニュータウンの豊ヶ丘という地区にあるマンションを購入して、転居。
マンションではそれまでのように、庭・屋根・外塀などの修理や維持を自分でしなくていいので、時間とさらに気持ちの余裕ができた。
しかし、思い切って生活を変える。これまで、あんなに楽しんでいた趣味を全部やめたのである。ちょうど、大腸癌が見つかって手術をしたというきっかけもあったのだが、自分の気持ちを一新するためにそうしたのである。
それまで指導してくださった方々には、感謝感謝である。しかし、私自身はもう少し違った人生を「設計」したい!
何を始めたのか? 対象は自分というよりも、コミュニティになった。住んでいる地域のことを考えて、自分を含めて住民が住みやすいところにするのが目標である。
まず、自分の住んでいるマンションの管理組合の理事になり、間をおいて今度は理事長になり、雨漏りや修繕のことで管理会社と交渉などもした。マンションの屋根に上ったのも、この時が初めて。
さらに、タイミングよくというか悪くというか、地域の社会公共施設(図書館・児童館・学童クラブ・老人福祉館・地区市民ホールが入っている施設)を経費削減のため閉鎖すると、多摩市が発表したのである。
地元住民に呼びかけて、「豊ヶ丘複合館存続の会」なるものを立ちあげ、署名を集めて市議会に対して、存続してほしいという陳情をした。
図らずも、その会の会長になってしまって私の遊行期はさすらい歩くというより、市役所へ交渉に出かけることが多くなった。その陳情は採択され、施設は一応存続となったが、どのようにするかは十年経った今でも協議中で確定していない。
そして、さらに数年後「豊ヶ丘図書館友の会」という、地域住民の親睦が目的の交流団体を作る。これの会長にもなって、読書会・講演会、それに、ニュースレターの作成などで忙しくしている。忙しいといっても、義務でやっているのではなく楽しんでいるのだから、人に愚痴をこぼすことはない。