【前回の記事を読む】「母が倒れた」という電話。私が忘れかけていた大切なものに気づかせてくれた瞬間
第二章独身時代、青春を謳歌する―日本復興の熱気の中で
神戸の恋人
しばらくしてデッキに誘い、さらに二人で話をした。周りには誰もいない。数時間前に会ったばかりではあるが、これが一目惚れというやつかもしれない。
このチャンスを逃すなと、もう一人の自分が背中を押した。思い切って彼女にキスをする。びっくりした表情の彼女が、またかわいい。女子高生ならではの初々しさだ。
その後、互いに住所を教え合って別れた。
母の見舞いに故郷を訪れたのに、母の状態に安堵しての帰り道には、もうこれである。お恥ずかしい限りだが、これも若さゆえとご理解いただきたい。
彼女とは、その後も連絡を取り合って、神戸の街で何度もデートをした。女の子とのデートは、飲み仲間の男友だちと騒ぐのとは、また違う楽しさがある。とても優しい心根の子で、いつも私を気遣ってくれた。焼き肉を食べに行くと、自分は一切れか二切れしか食べず、あとの焼けた肉は全部私の皿に載せてくれるような子であった。
とにかく神戸の街には若いカップルにぴったりのおしゃれなデートスポットもたくさんあったから、若い彼女を連れてはいろいろなところに出かけて青春を謳歌した。
おかげで神戸には、心に残る多くの思い出を残すことができた。しかしこの恋も、突然の終わりを迎えることとなる。