【前回の記事を読む】結婚はタイミング?容姿に自信のある私ならいつでも結婚できると思っていたけど…。
結婚のカタチ
ラウンドカフェは、このマンションのロビー横にある集会室で、月二回程度開かれる住民の交流の場である。
理事会の担当者が準備するのだが、毎回、住民や地域の方をゲストに迎え、得意分野のお話を聞き、その後お茶を飲みながら交流するというもので、平均三十名くらいが参加している。美紀も、仕事の空いているときに何回か参加したことがある。
「今回のゲストはどなたなんですか」
「確か、駅前の整体の先生だったと思うわ」
「そうですか、うちに来てくれ的な客寄せの話なら面白くないけど」
「そうじゃないようよ。肩こりや腰痛がひどくならないように、日頃から軽い運動をするのが良いとかを教えてくれるって書いてありましたよ」
「私、職場でパソコンを使うので、首や肩がこるから出てみようかな。ありがとう、山本さん」
美紀は一つ楽しみが増えたと思った。ストレッチはたまにするが、自己流なので効いているのかどうか分からない。ラウンドカフェで効果的な話が聞ければもうけものだと思った。
ロビーを入って郵便受けを見る。DMばかりである。数枚をそばの収集箱に入れてから、エレベーターで六階の自宅に向かった。エレベーターは二基あるので、あまり待たないのが良い。ほどなく六階についた。
廊下では子どもたち が三輪車で遊んでいた。広めの廊下は子どもたちにとっては格好の遊び場なのだろう。多少うるさいが、夕方までだからあまり気にならない。遊んでいる子どもの中に、隣の村井さんの子どもがいた。
「ゆみちゃん、こんにちは」美紀は三輪車で遊んでいる子に声をかけた。
「あ、お隣のお姉ちゃん、お帰りなさい」
「三輪車、うまくなったわね」
「うん、毎日乗っているよ。楽しいもん」
由美子はにこにこしながら答えた。
「じゃあ、またね。バイバイ」
美紀は三十五歳。もうすぐアラフォーだ。いまだ独身で一人住まい。現在付き合っている男性はいるのだが、結婚するかどうか思案中である。確かゆみちゃんのママは、私より二歳上だった。そう考えると自分も結婚してもいいかなと思うのだが、今は自由な生活を楽しんでいるため、結婚に一歩踏み出せないというのが本音である。