結婚のカタチ

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「美紀、こちらの部屋に荷物を置くと良いよ。僕は隣の部屋を使っているから」

「はい、分かりました。クローゼットも使っていいかしら」

「もちろん。クローゼットには多少物が入っているけれど今回使うには十分だと思うよ」

荷物といってもスーツケース一つだから、あっという間に片付いた。

「時々来ていて部屋の中は大体分かっていると思うから、好きに使っていいよ。そうそう、一週間の食費代として念のため一万円渡しておく」

「そんなに必要ないと思うけれど、とりあえずお預かりしますね」

結婚したら、夫から生活費をもらうということになるのか。でも共働きなら生活費は折半にするか、お互い何を分担するか決めるほうがいい気がする。これから毎日いろんな気づきがあるんだろうな。

「おや、もう昼過ぎているね。買ってきた寿司でも食べようか」

「そうね、インスタントのお澄ましでもあればいいのだけど」

「味噌汁か卵スープならあったと思うよ。それでいいかな。昼は僕が準備するから、夕食は頼むね」

健一は棚からインスタントの味噌汁を出して手際良く準備を始める。

「では、お言葉に甘えて、そうさせていただきます」

まだまだ残暑が残る九月。美紀はこれから一週間の生活が楽しくもあり、またちょっと怖くもあった。

長年一人住まいで気ままに過ごしてきたのだから、誰かと一緒に住むことは本当に心地良いことなのか、大好きな健一ならうまくやっていけるのか。同居がいいとも思ったが、別居結婚もありかもしれないなどなど気になることはいくらでもあるが、今これ以上考えても答えが出るわけがない。

とにかく一歩踏み出すことに決めたのだ。これから一週間とりあえずやってみよう。先のことはそれから考えよう。

翌日からは、結婚生活同様の日々が始まった。朝食はそれぞれが準備し、時間になったら出勤し、夕食は基本的には美紀が帰宅後作ることにした。