結婚のカタチ

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夕食用にとコロッケとサラダでも買って帰ることにした。コロッケは揚げたてで、サラダも自家製を置いている店が何軒かあるので重宝している。「いらっしゃい。お出かけだったのですか」と、店主が声をかけてくる。

「ええ、ランチに出かけていたんです」

「そうでしたか。今日のお勧めは、かにクリームコロッケとカボチャだね」

「あら。カボチャのコロッケは最近いただいてなかったから、一ついただくわ。それから、コールスローもお願いします」

「カボチャコロッケとコールスローで合計五百五十円です。毎度ありがとうございます」

夕食の準備もできたので、あとは、上田さんのところに寄ってシールを受け取るだけ。五階でエレベーターを降りて上田さん宅のブザーを鳴らすと、子どもが顔を出した。

「ママ、上の階のお姉ちゃんだよ」

「あら、お帰りなさい。はい、預かりもの」

「ありがとうございました。助かりましたわ」

「とんでもない。ところで、今から貼ってみるの?」

「ええ、夕食前にやってみようかと思って。そうそう、お宅の貼ってあるのよろしければ見せていただけないかしら」

「もちろんよ。どうぞ」

美紀は玄関で靴を脱ぎ、あとをついていった。間取りは一緒だが、子どもがいる家族は雰囲気が全く違う。壁には、子どもの喜びそうな動物やキャラクターのシールが貼ってあった。

「これ、子どもたちのリクエストで貼ったものよ。それから、廊下のボーダーがこれ。単純に貼っただけなんだけど、ひと味違った雰囲気がでるのが不思議よね」

最後はトイレを見せてもらった。大きなバラの花と小振りのバラがバランスよく貼られていて、華やかな雰囲気になっていた。

なるほど。気に入ったものを貼って、飽きたら剥がせばいいだけ。場所によって雰囲気を変えるのにはお手軽な方法である。

「ありがとうございました。とても参考になったわ」

美紀は自宅に帰ると、早速買ったシールをテーブルの上に並べてみた。少し余分に買ってきたので、いろんなバリエーションが考えられそうだ。

トイレに窓はないが、おしゃれな小物が置いてあるので、何も貼らないことにした。とりあえず廊下にボーダーを貼ってみようと思い、モザイク風の落ち着いたデザインを選んだ。

まずは壁を乾拭きし、ゴミが付かないようにしてから、横にまっすぐ貼るため床から物差しで測った。そして七十センチのところにマスキングテープで印を付け、曲がらないように気をつけながら、慎重に貼っていった。