序節 日本書紀の編年のズレ

第1節 6~7世紀の日本書紀編年の捏造表

補論1 顓頊暦概論とその手計算例

1太陽年を24等分して、これに季節に相応しい名を付したものを24節気と呼ぶ。24節気は順に正月節・正月中・2月節・2月中……12月節・12月中と呼ぶのが最も簡単であるので以下の計算では専らこの呼び方を用いるが、それぞれに季節を表す言葉が付けられている。立春はそのうちの正月節の名である。

他の名は次の通り(ただし次節に述べる儀鳳暦では正月中が啓蟄、2月節が雨水とされて、逆になっている。漢代以前の古い伝統を一時的に復活させたためという――細井浩志氏著『日本史を学ぶための〈古代の暦〉入門』〔吉川弘文館 2014年〕p.20参照)。

 

この24節気は四分暦を初めとする太陰太陽暦では、月名を決め、また閏月を挿入する年を決める指標になる(ただし、顓頊暦は、下に述べる「歳終置閏法」を採用するため、特殊である)。

通常は、N月中を含む月がN月と称される。このN月を暦月と言い、24節気にいうN月節・N月中のN月を節月という。暦月と節月は長さも位置も異なるので注意が必要である。

1朔望月は中気から中気までの長さ(=12分の1太陽年)より短いので、暦月の位置によってはその暦月に中気が含まれない暦月が生じる。このような月が生じた場合、その年は閏年とする。顓頊暦の場合は、前年の10月から次の年の9月までが通常の1年とされるが、閏年となった場合は最後の9月の次に後9月を入れて13か月とする(いわゆる歳終置閏法である)。

これに対して元嘉暦のような後世の太陰太陽暦の場合は、中気を含まない暦月が生じると、この月の名を前の月のN月に閏を添えた閏N月と名付けて1年を13か月とする。いずれの太陰太陽暦でも、暦月の正月朔より前に、節月の正月節=立春が来ることは少なくない。つまり年が改まらないのに立春がくることは稀ではない。暦月と節月が異なる故である。