朝の散歩
毎朝5時に、ウチの旦那にモーニングコールをする。彼は2階で、私は1階で寝ているからだ。雨でなければ大分川まで出掛けて行って、河口まで散歩するのが日課だ。
近隣の森だけでなく、河口付近にも鳥が多く生息する。年がら年中いるのは、カラス、鳩、スズメ、トンビ、カモメ、白鷺、青鷺などお馴染みの鳥達だ。
春になると、名前を知らない野鳥が増え、蝶々もヒラヒラと飛び交う。晩春から初夏に掛けて盛んに鳴くのは、雲雀だ。揚雲雀は、本当に鳴きながら空高く舞い上がり、点としか見えず、更に声はすれども姿は見えずの状態になる。その間、私達はポカンと、鳴き続ける雲雀を目で追っている。見えなくなったなと思っていると、突如雲雀が空から降ってくる。落雲雀だ。雲雀はなかなか向こう意気の強い鳥だが、小さい体でとんでもない曲芸を見せてくれるのだ。大したもんだと唸ってしまう。
夏から秋にかけての青空の下では、トンボが群れ飛ぶ。茶色、黒、塩から、そして秋めくと赤トンボが沢山見られる。
冬はどんよりした空の下、カモの群れをしばし観察するのに時を費やす。カモだけでなく真っ黒な鵜もいる。鵜は、カモと違って潜る時間が長い。また、寒鴉(かんあ・かんがらす)も風情がある。黒い羽をポサポサと膨らませて寒さに耐えている姿は、人を寄せつけない孤高さえ感じさせる。夏を待たずに、多くの鴨は新米連中を引き連れて、Vの字を作りながら、北へと帰って行く。もちろん、残り鴨も結構いるにはいるが。
大分川という大きな川自体もゆったりした大らかさがあり、大分の土地を魅力あるものにしている。夏になるとカヌーが現れ、巧みにオールを操っている。カヌーも難しいらしい。カヌーは幅が狭いからクルリと回転し易く、初心者の場合、しばしば転覆の浮き目に遭うと聞く。私達はカヌーの主を『カヌー小父さん』と呼び、
「今日はカヌー小父さんに出会えたから、ラッキーな一日になる」
などと勝手なことを言いながらはしゃぐのだ。朝日に川面がきらきらと輝き、その中をカヌーが一艘突き進んでいく様は、一幅の絵を見るように美しい。