第一章 アフリカのホモ属(ヒト属)
《一》二足歩行を始めたホモ属(四〇〇万年~二五〇万年前)
地球が誕生して四六億年、その地球に生物が誕生して四〇億年、その中から脊椎動物が誕生して五億年、その脊椎動物の両生類が上陸し、爬虫類、恐竜、哺乳類、鳥類などが次々と誕生してきました。
六五〇〇万年前の巨大隕石の衝突で地球上を支配していた恐竜が絶滅して哺乳類の時代がやってきましたが、その時の哺乳類はすべて大きさも姿もネズミのような動物でした。そのような哺乳類の中から霊長類(サル類)が生まれ、その霊長類から二五〇〇万年前頃、類人猿(ヒト上科・ホミノイド)が分岐しました。
二〇〇〇万~一〇〇〇万年前には多種多様な類人猿がいたことは多くの化石の発見でわかっていますが、それ以後の時期(一〇〇〇万年前以降)の類人猿化石の発見は驚くほど少なく、これが類人猿の段階から人類の段階への進化を具体的に考えるのを困難にさせています。
テナガザルは遺伝子分析によりますと、ヒトに至る共通の祖先から一八〇〇万年前に分かれたと言われています。現生のテナガザル類は、インドネシアおよびボルネオを含む東南アジアの熱帯雨林に生息しているだけです。
以下同じく類人猿の遺伝子分析によりますと、私たちの共通の祖先からオランウータンが分岐したのは、およそ一四〇〇万年前でした。オランウータンは現在、スマトラ島とボルネオ島にしかすんでいません。私たちの共通祖先からゴリラが分岐したのは、八〇〇万年前です。現生のゴリラはアフリカ大陸の赤道直下の樹林に生息しています。
私たちの共通祖先から、七〇〇万年前から五〇〇万年前の間に、アフリカのどこかで、私たち人類とチンパンジーは分かれました。ということは、それからの七〇〇~五〇〇万年の間に、人類は現在の人類社会を築き、チンパンジーはアフリカのジャングルでチンパンジー社会を営んでいるということになります。
逆に言いますと、私たちの人類の祖先も七〇〇万~五〇〇万年前は、たぶん、チンパンジーに近かったと想像できます。現在のところ、人類がしっかりした二足歩行をしていたことが、確認されているのは、およそ三九〇~三〇〇万年前に生きていたアファール猿人からであります。
それ以前については、つまり、四〇〇万年前より前の時代に、果たして人類は二足歩行をしていたかどうかについては、研究者の意見は必ずしも一致しているわけではありません。
四〇〇万年前より古い人類化石の主なものは、アルディピテクス・ラミダス(四四〇万年前)、アルディピテクス・ガダバ(五八〇~五二〇万年前)、オロリン・ツゲネンシス(六一〇~五八〇万年前)、トウーマイ(七〇〇万年前)などですが、現段階では、いずれも二足歩行を行っていたという確実な決め手を欠いているといえます。