【前回の記事を読む】地球上に「ヒト」が現れたのはいったいいつ?重要な存在となる「ルーシー」とは

第一章 アフリカのホモ属(ヒト属)

《一》二足歩行を始めたホモ属(四〇〇万年~二五〇万年前)

二足歩行後の人類化石の発見

写真を拡大 [図表1]人類の進化(推定を含む) 筆者作図

この頃、東アフリカで乾燥化が進み、既存の草食獣は乾燥に適応した動物種に遷移しました。この環境変化に対応するために、アファール猿人に二つの方向への進化が起きました。

一つは、乾燥化で拡大したサバンナで死肉漁あさりの機会の広がった環境に適応したホモ属(ヒト属。ホモ・ハビリス)の系統です。もう一つが、根茎類などの地下茎の硬い食物に適応した頑丈型(パラントロプス・エチオピクス)で、アファール猿人からの分岐は、こちらの方が早かったでしょう。その方向に舵を切れなかった基幹となったアファール猿人は絶滅しました。

図表1において、二五〇万年前のホモ・ハビリス以降のホモが付くものは、すべて私たち人類に直接つながるご先祖であることがわかってきました。

ホモ・ハビリスは二五〇~一八〇万年前でしたが、その後二六〇~二五〇万年前のアウストラロピテクス・ガルヒが石器を製作していたことがわかりましたので、ホモ・ハビリスの前に入るかもしれません(図表1ではそうしています)。

その後、ホモ・ハビリスはホモ・エルガステル(一八〇~一六〇万年前)、ホモ・エレクトス(一六〇~六〇万年前)、ホモ・ハイデルベルゲンシス(六〇~二〇万年前)、ホモ・サピエンス二〇万年前~)へとつながりました。

一方、パラントロプスの系統からは、エチオピクス(二七〇~一八〇万年前)はエチオピアとケニアに、ボイセイ(二三〇~一三〇万年前)はケニア、タンザニア、エチオピアに、ロブストス(一八〇~一五〇万年前)は南アフリカなどに現れましたが(化石が出土しましたが)、一三〇万年前頃に絶滅したと考えられています。

乾燥した草原で硬い植物を食べるために歯と顎が巨大に発達し、頭頂部には側頭筋が付くためのゴリラのような矢状稜がありましたが、脳容積や体の大きさはアウストラロピテクスと本質的に変わりませんでした。