人類の多様な進化

三〇〇万~二〇〇万年前にかけ、気候変動により草原が広がったことで、ウシやレイヨウなどの草食動物がいっせいに多様な放散を遂げていました。

森が減少して、大草原が広がったことは草食動物にとってはよいことでしたが、類人猿や誕生したばかりの人類にとっては厳しかったようです。人類の祖先は、草原という新たな環境が出現し、草原に出て行ったもの、森の近くに残ったものに分かれました。さらに食性や気候変動によって、それぞれが孤立し、種を多様化させていきました。

当時の人類祖先は、五〇人ほどのグループを作り、食料の分配や貯蓄など、社会性を発達させて生活していました。アフリカの草原が拡大した二〇〇万年前頃の時期には、パラントロプス以外にも人類の仲間が数多く見つかっています。ケニアの東ツルカナ地方では、ホモ・ハビリス、ホモ・ルドルフェンシス、パラントロプス・ボイセイ、パラントロプス・ロブストス、ホモ・エルガステルが共存していたことになります。

七〇〇万年前から、現在のホモ・サピエンスまでの間に、細かく分類すると約二〇種類にのぼる人類の祖先がいたことになります。つまり、人類の祖先もまた、他の生物と同じように、環境変動によって孤立し、さまざまな種に分かれ、その中から成功したものが繁栄し(失敗したものが絶滅し)、子孫を残すという進化の道を歩いてきたのです。