はるな達は餅を一口食べたが、甘くなかった。柔らかくてねっとりとした食感は餅そのものだが、あんこも入っていないし、きなこも付いていない。ゲンタが「まずい」と言った。
「黙って食べなさい」
「なんも味がせんよ」
「佃煮にもなんもなしのご飯かパンじゃ」
「黙ってありがとうって頂くのよ。それが礼儀」
「ほなって、なんも味がないモン」
「失礼ね。せっかく持ってきてくれたのに」
「静岡にいた時、岐阜で食べた橡の実餅の味がする」
と、みやが言った。
ゆっくりとかみ続けていると、かすかな甘みがしてきた。皆で一つずつ食べて、残りはティッシュにくるみ、ポケットにしまった。作業所の中の人たちが、はるな達に、今自分たちがしている作業の説明をした。
「やまのしごと、おおまかに、しゅだけにする。もってかえる。しゅでないいし、のこっている」
一人が手を上げたので、七人はその前に集まった。
「いりぐち、しゅのあるいし、ないいし、わける。しゅのないいし、すてる」
隣の一人が手を上げた。子供たちはそちらに移動した。
「いし、ちいさく、くだく。しゅ、よりわける。さらに、きれいにくだく。よりわける。これを、くりかえす。しゅだけにする」
さらに隣の人が手を上げた。皆そちらに移動した。
「つぎ、いしうすにいれる。きねで、こまかくする。こなにする」
入り口近く、水を満々とたたえた瓶びんの前にいる人が手を上げた。
「つぎにみずであらう。なんかいもあらう。きれいなしゅだけにする。かわかす」
その隣の天秤ばかりを持った人が子供たちを手招きした。
「これではかる。うつわにつめる。しゅ、できあがる。うりものになる」
最後に洞窟の男が尋ねた。