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エッセイ
『あなたがいたから』
【第15回】
坂本 りの

「分からない、何もかもが分からない」初めて見せた大粒の涙姿の夫。あの時抱きしめて慰めてあげられなかったことが今でも…

三月に入った頃には今まで少しはできていた事が、一つずつできなくなったのだ。大学病院のトイレも、なかなか出て来ないと「どうしたのだろう」と心配になった。男性トイレに入って行く事もできないし、出てくるとほっとしたものだ。この頃は歩行も、やっとという感じであった。又トイレの位置が分らなくなり、台所の流しに尿をしてしまったり、お風呂場、洗面所でしてしまったり、大変であった。病気が進み分からなくなっている…

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小説
『アザレアに喝采を』
【第6回】
藤咲 えこ

「食べ物に支配されている」…自分でも気づき始めていた。普通のダイエットではなく「拒食症」という摂食障害であることに

手のかかる幼い子供がいる川田さんが、私たちを招いてもてなしてくれる。その手料理を残すことはいくらなんでもできないと初めから思っていた。せっかく久しぶりに集まった場の雰囲気を壊したくもなかった。「食べる」か「食べない」かは予め自分で作り出したルールによってしっかりと決められていて、予定以外のものを口にすることは決してなかった。「食べ物に支配されている」と栞は感じていた。カロリーや栄養成分などで食べ…

ランキング

  1. 小説
    『心ふたつ』
    【第13回】
    高田 知明
    1位 1

    想い人との結婚は出来ぬと諦めた。しかし婚姻の場に現れた綿帽子で顔を隠したその女性の正体は...!!

    日が西の空に傾き始めた暮れ六つ時、佐吉は、紋付羽織と袴姿に着替えさせられた。腰には先祖伝来の、宮下藩の殿様から拝領したという脇差を挟んだ。その姿で大広間に向かうと、部屋も庭も既に来客であふれかえって…
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    『朝陽を待ちわびて』
    【新連載】
    桜木 光一
    2位 2

    父の通夜に現れなかった妻。自宅階段の手すりに白い紐が結ばれていて…

    妻の命を守るためにご尽力頂いた皆様に感謝申し上げます。医療機関の皆様には特にお礼申し上げます。自傷行為者の介添人として私自身も入院させて頂いたことは、妻の励みになりました。心から感謝します。私が疲弊…
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    『不倫された側』
    【第8回】
    及川 夢
    3位 3

    もしかして妻が不倫?妻の車にGPSを仕掛けたところ、家から20キロも離れた町で、発信機が止まった!

    【前回の記事を読む】気分はスパイ大作戦!?嘘をつく妻の車にGPSを仕込んだ…。妻は一体どこへ向かうのか享子は朝6時まで仕事をしている。だから交代、引継ぎ、着替えなどを済ませて6時30分くらいには駐車…
  4. 小説
    『シュバルツ・ヴァルト』
    【第5回】
    萬野 行子
    4位 4

    高いところから転がり落ちて、病院に担ぎ込まれた兄。「念のため、今晩一晩泊まっていって下さい」と話した医師は…

    「外国での競技会にもITAという国際検査機関から、IDCOと呼ばれる人たちが派遣されてくるのよ。国内の大会でももちろんだけど、世界選手権のような大きな大会では、公平公正な競技会であることが必須でしょ…
  5. エッセイ
    『カサンドラ症候群からの脱却[人気連載ピックアップ]』
    【第15回】
    Happy Navigator 那美
    5位 5

    夫との関係修復にハイキングを提案。大荷物を抱えて無言の登山、無言の野外調理をするハメに。

    このことがあって、私は夫を問いただし、なぜ子どもたちが大変な時期に、こんなバカげたことを必死でやっているのかを尋ねたのですが、本人はキョトンとしています。なぜ妻がこんなにも怒っているのかが理解できな…

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    【第17回】
    ジェームズ リッカーズ,伊藤 裕幸
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    ブッシュ、オバマ政権時代に膨れ上がった国の借金を引き継いだドナルド・トランプ

    大昔からどこにでも見られる一般的慣習として、平和時には蓄えをして戦いに備え、征服或いは防衛の手段として事前に財を蓄積する。世の中が乱れ、混乱に陥った時には、決して並外れた課税などに頼らず、ましてや借…
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    【第6回】
    藤咲 えこ
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    手のかかる幼い子供がいる川田さんが、私たちを招いてもてなしてくれる。その手料理を残すことはいくらなんでもできないと初めから思っていた。せっかく久しぶりに集まった場の雰囲気を壊したくもなかった。「食べ…
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    『壁』
    【第6回】
    柄川 順

    私は80歳で運転をやめた。幸い、人身事故を起こさなくて済んだので、これをキリとして、運転を諦めた。結果として…

    ここは堀辰雄の『風立ちぬ』(岩波書店、1956年)の基になった場所である。結核で富士見高原療養所に入院、同時期に入院していた節子との心のやり取りが、きれいな文章で書かれた小説で、冒頭の「風立ちぬ い…
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    『心ふたつ』
    【第16回】
    高田 知明

    「舞子さんを俺の妻として迎えたいと思います」突然の告白で断られるかもしれなかった。そして涙を浮かべた彼女の返事は...

    道は次第に平坦になり、村のメインストリートに合流する。メインストリートといっても、直線の県道の両脇に二百メートルほどに亘って繁華街が続いているだけの、小さな宿場町といったところだろうか。もう店を開け…
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    中條 てい

    「もう、街にはいかないで」―この子には、わかるのか。…出会わなければよかった。彼女を知らなければ、オレは今でも…

    やがて何かを見切ったように顔を逸らすと、彼女は椅子の向きを戻してすらりとした脚を組み直した。ほんのしばらく、そのまま通りに目をやっていたが、急に思い出し笑いをするかのように肩をひくつかせ、小さく声を…

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