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小説
『アイアムハウス』
【新連載】
由野 寿和

静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた

午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…

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小説
『聖なる川のほとりで』
【第8回】
飯島 恭広

インドの手荒な洗礼を受け気を落としていると、ガンジス川で祈りを捧げる少女と出会った。

彼女は言い終わると、腕を組みソッポを向いた。僕は唖然として何も言い返せなかった。悔しいけれど、したたかなインド人女性に軽くあしらわれてしまったのだ。好奇の目で見物していた人垣をかき分けて、その場から逃げるように立ち去った。行く当てもなく路地を彷徨(さまよ)っていたようだ。いつの間にかバザールの喧騒から離れていた。インドの暮らしにようやく慣れて、少し自信のようなものが芽生えてきたところだったが、そ…

ランキング

  1. エッセイ
    『迷子 うつと離婚と私[人気連載ピックアップ]』
    【第6回】
    野沢 りん
    1位 1

    母の葬儀が終わり施設へと帰った父。そして事件は起こった。父のベッドの上で介護士が見たものは...

    介護士さんの心配父は認知症、母は車いす。母が台所に立てなくなり、父が炊事をしていた。一日に二回買い物に同じものばかり買う。郵便局も一日二回、父のルーティンである。郵便局には残高を聞きに。よほどお金の…
  2. 小説
    『不倫された側』
    【第8回】
    及川 夢
    2位 2

    もしかして妻が不倫?妻の車にGPSを仕掛けたところ、家から20キロも離れた町で、発信機が止まった!

    【前回の記事を読む】気分はスパイ大作戦!?嘘をつく妻の車にGPSを仕込んだ…。妻は一体どこへ向かうのか享子は朝6時まで仕事をしている。だから交代、引継ぎ、着替えなどを済ませて6時30分くらいには駐車…
  3. エッセイ
    『朝陽を待ちわびて』
    【新連載】
    桜木 光一
    3位 3

    父の通夜に現れなかった妻。自宅階段の手すりに白い紐が結ばれていて…

    妻の命を守るためにご尽力頂いた皆様に感謝申し上げます。医療機関の皆様には特にお礼申し上げます。自傷行為者の介添人として私自身も入院させて頂いたことは、妻の励みになりました。心から感謝します。私が疲弊…
  4. エッセイ
    『ある朝、突然手足が動かなくなった ギランバレー症候群闘病記[注目連載ピックアップ]』
    【新連載】
    市川 友子
    4位 4

    "その日"の前日まではいつも通り。2駅先まで散歩をして、精力的に動き回っていた。

    2020年のクリスマスに、友人から貰ったワインを飲んでお祝いをした。クリスマスの祝いではなくギランバレー症候群から生還して2年目の乾杯だ。何の因果でわざわざクリスマスの日に発症し、ICUに入るまでに…
  5. 小説
    『心ふたつ』
    【第23回】
    高田 知明
    5位 5

    『ふみ』さんの呪いを断ち切るために、生まれたばかりの長男を危険に晒すかもしれない"奥の手"を使う他なかった...

    「父さん。今の世の中、千グラムにも満たない未熟児だって完全看護の中でちゃんと成長するんだよ。混合ワクチンだってあるんだ。もう『ふみ』さんに頼る必要はないんじゃないの? このあたりできっちり縁を切るこ…

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  2. エッセイ
    『ある朝、突然手足が動かなくなった ギランバレー症候群闘病記[注目連載ピックアップ]』
    【第6回】
    市川 友子

    「殺される、やめて、死んでもいい」幻覚と現実の区別がつかず、癇癪を起こし手を拘束された。

    【11日】この日の午後、器官を切開し人工呼吸器を装着した。私は寝ていて気がついたら、喉からチューブが出ていたという状況。喉の痛みから解放されたから痛み止めは必要なくなった。1週間後にスピーチカニュー…
  3. 小説
    『空に、祝ぎ歌』
    【第27回】
    中條 てい

    「なんなのこれ」「車両通行許可証さ。そう書いてあるだろ」「だから、なんのって聞いてるのよ!」熱心な彼女の目的は一体…

    「ねえ、車で送ってよ」朝のバスを走らせ、村に戻ったエゴルをキーラが待ち構えていた。「ああ、いいよ」これまではいくら車で送ってやると言っても爪をたてた猫のように毛嫌いしていたのに、向こうから言ってくる…
  4. エッセイ
    『知らぬが佛と知ってる佛』
    【第8回】
    丹澤 章八

    闘病中の私を「沢山の人を助けたんだから」と励ます妻。だが私は地獄に落ちるだろう—産婦人科医だった頃、優生保護法のもと…

    この日は日曜日。検査もなく所在ないまま病棟の廊下を十周し、シャワーを浴びたところへひょっこり後藤医師が顔をのぞかせ、負荷心電図の結果はパスしたと君に告げた。ところがである。先日、負荷心電図検査が終わ…
  5. エッセイ
    『迷子 うつと離婚と私[人気連載ピックアップ]』
    【第12回】
    野沢 りん

    「彼女を愛人として認めてほしい」夫からの信じられないお願い。夫は私の父が亡くなった日にも彼女と夕食を食べに行っていた。

    新築築60年の家を建て替えることになった、ということは彼女と別れてやり直すのかと思った。(甘かった)打ち合わせ中も、彼女から電話がなる。「なぜ家を建て替える必要があるのか」と、電話からどなる声が漏れ…

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