8月の新連載のお知らせ

夏休みのお供に♪
8月は26作品がスタート!


8月14日(木)
20時~『アントライユ』鈴木恋奈

8月16日(土)
7時~『JANOBO 幻想のジパング』田中 恒行
8時~『調達の最適解』田中 俊英
12時~『千年の密約』藤田 基寛
14時~『ラスコーリニコフ 苦悩の正体』岩澤 聡史
18時~『人生を失い、それでも女は這い上がれるか』杉山 成子
19時~『素晴らしき出会い』久保田 亘
20時~『終の棲VI ことすべて叶うこととは思わねど』北沢 美代
21時~『ひとり語りのリカバリー 統合失調症の賜物』大瀧 夏箕
22時~『かれらの世界』えんどう としこ

8月17日(日)
7時~『アリゲーターブリッジ』菊谷 保
8時~『腫瘍内科が拓く がん医療』福岡 正博
12時~『楽ではない お金もかかる 大変なだけ それなのになぜ行った!?』本間 照雄
14時~『生きる本当の意味とは?』高田 佳世子
18時~『菟狭津彦が見た倭国の歴史』宇佐津彦 清智
19時~『BLUE EYE』藤堂 ラモン
20時~『インドシナ・エレジー』柴田 和夫
21時~『奇跡の贈り物』かつくり
22時~『するすみ九郎』三崎 暁子

8月18日(月)
8時~『私ももっと、手を抜きたい』さおり
12時~『Northern Colors Ⅱ』華優
14時~『ケルベロスの唄』佐々木 啓文
18時~『魔女汁』坐和 正
19時~『月海』月原 悠
20時~『ペットアロマホームケア』吉永まり
21時~『ボイス・リミット』松本 悠佑

8月14日(木)20時~

『アントライユ』
鈴木 恋奈

GLO主催「訳アリ恋愛コンテスト」大賞受賞作!

新潟県の田舎で育った雫と千春は、互いの親から逃げる様に東京に身を潜めていた。雫は、ピアスの数を揃えるほど千春に深い思いを寄せているが、そっけない千春と心から打ち解けられず、不安を抱く。何となく一緒に生きているような曖昧な関係の二人に、ある日、転機が訪れる。千春が雫に寄せるのは、同情か、愛情か。
二人を蝕む黒い霧は、晴れることを知らない――。

本文をチラ見せ!

アラームが鳴る前に目が覚めた。二人で寝ているベッドはどうしても冷たくて、思わず身が震える。
隣で寝ている千春は相変わらず背中を向けている。起こさないように、するりとベッドから抜け出す。
激安スーパーで手に入れた卵をフライパンの上に丁寧に二つ落とす。熱に晒された白身はパチパチと怒っている。
「千春みたい」
そう呟くと、彼が寝室から出てきた。男にしては少し長い襟足。彼の細くて青白い首を隠すように垂れている。ブリーチをして傷んだ毛先が跳ねていて可愛い。最近染めてないから、黒い部分が伸びてきている。彼はそこを雑に掻き毟り、冷蔵庫から水を出して飲み干した。…

8月16日(土)7時~

『JANOBO 幻想のジパング』
田中 恒行

この国の明日はどこにあるのか。

 
 

「国際貢献」という美名の裏で、誰かが犠牲になっている──
外国人技能実習制度の矛盾に直面した青年は、社会の暗部を知ることになる。
制度は誰のためにあり、正義はどこにあるのか。
現代日本の歪みを問う、痛烈な社会派フィクション。

外国人労働者問題に関心のある方必読

本文をチラ見せ!

「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的としております」(厚生労働省ホームページ)

吉岡はインターネットでこの言葉を調べていた。

政府のホームページには、発展途上国の若者を日本に招いて、日本の最先端の技能を学びながら収入を得ることができる制度であるとの紹介がなされていた。一方でマスコミやNPO団体のホームページには、技能実習生は安い給料で酷使され、…

8月16日(土)8時~

『調達の最適解』
田中 俊英

企業の競争力を決める戦略的価値創造部門へ

 

調達・購買の基礎知識から交渉スキル、組織設計、グローバル・サステナブル調達まで、20年超の現場経験をもとに導き出した、プロフェッショナルのための実践知
事例紹介・用語解説も充実!

「コーポレート部門の中で、調達部門ほど社内・社外に数多くの接点があり、 経営からの期待も高く、従業員からも身近で関心が高い部署は他にないのではないか」(本文より)
・調達コスト削減により、企業利益に直接貢献
・サプライヤと協働し、倫理・人権・環境の課題を解決
企業価値向上に直結し、社会と企業をつなぐ戦略機能としての調達の極意を実務者視点でわかりやすく解説。
大企業から中小企業まで、経営者、マネージャー、実務担当者、そしてこれから調達に携わるすべてのビジネスパーソンへ贈る決定版!

本文をチラ見せ!

昨今、ビジネスに関する書籍では、経営管理、会計・財務、人事、法務・CSR 等に関する本がどこにでもあふれていますが、「調達」に関するビジネス書がほとんどないことに気づきました。

皆様は、「調達」というとどんなものを思い浮かべますか。

すぐに思い浮かぶのは、原材料・商品、パソコン・事務用品等でしょうか。そして少し詳しい方なら、物流・エネルギー関連、建物・設備・機器等を想像されるでしょうか。

これに対してなかなか思い浮かばないのは、…

8月16日(土)12時~

『千年の密約』
藤田 基寛

終わらない宿世を、終わらせる

 
 

生×死
平安×現代
宿命×意志

冥界と現世が重なる京都の地に、“人の死が見える力”をもつ少女がいた。
千年前からの因果が交錯し絡み合う、ファンタジー小説。

本文をチラ見せ!

内裏にいる左大臣藤原道長(ふじわらのみちなが)のもとに使いの者がやって来たのは夕暮れ前であった。道長がその知らせを聞いて慌てて馬を走らせ向かった先は、東京極大路と綾小路が交わる辺りの小さな邸であった。庭の手入れは行き届いているが、どことなく華やかさに欠けている。

「如何されましたか」

「姫が今朝より起き上がれず返事もございません」

道長の問いかけに応えている老女は、臥せっている姫の祖母の昌子(せいし) である。この姫は道長がまだ若きころに…

8月16日(土)14時~

『ラスコーリニコフ 苦悩の正体』
岩澤 聡史

罪の果てには断絶の痛みが待っていた

 
 

歪んだ観念から金貸しの老婆を殺したラスコーリニコフは、底知れない孤独と疎外感に襲われる。自ら犯罪を正当化していたにもかかわらず、なぜ苦しまなければならなかったのか。
ドストエフスキーの名作『罪と罰』に新たな解釈を試みた意欲作。

本文をチラ見せ!

十九世紀ロシアを代表する作家F・M・ドストエフスキー(一八二一-一八八一)の『罪と罰』(一八六六)は、世界文学史上あまりにも有名な作品である。

舞台は、当時の帝政ロシアの首都ペテルブルグ、主人公は、貧乏な元大学生のラスコーリニコフだ。ラスコーリニコフは、強盗殺人の罪を犯す。意地が悪く、強欲で、他人の生き血を吸うような金貸しの老婆を殺害し、金品を強奪するのだ。

それは衝動的な犯行ではなく、彼が考えに考え抜いた末の計画的な殺人だった。

私が理解できなかったのは…

8月16日(土)18時~

『人生を失い、それでも女は這い上がれるか』
杉山 成子

アルコール、性的虐待、経済的困窮――。
女たちは壊れてなお、生きつづける

 
 

何日もお風呂に入らないし着替えもしない。ビールもちっとも美味しくない。味などわからないのだ。
だが、飲まずにはいられない。うす汚れたかっこうでコンビニに行き、ビールを四、五本抱えて帰ってくる。
布団の中に入って、それをちびちび飲む、時々、トイレで吐く。 この連鎖をどうにか断ち切ってほしいと願うようになった。(本文より)

第18回民主文学新人賞受賞作家による、書き下ろし・発表作を4編収録。

本文をチラ見せ!

潮の香りがする。海沿いに建つ千里浜病院。正式名称を「国立病院機構 千里浜医療センター」という。アルコール依存症専門病院として老舗的存在だ。

「千里浜に入ったらおしまいだな」。人生を失った者たちの巣窟である。

二〇〇四年秋、恵子はこの病院の入り口に立った。夫の浩に連れてこられたのである。酒でむくんだ顔、頼りない足どり。終着点なのか、出発点なのか。

恵子はもうここしか来るところがなかった。浩に腕をつかまれて、どうにか立っていた…

8月16日(土)19時~

『素晴らしき出会い』
久保田 亘

「人生を豊かにするのは、出会いと小さな旅だ。」

 
 

医師として、旅人として――。
出会いの記憶、学びの軌跡、忘れ得ぬ風景をたどる随筆と紀行の集大成。
一篇一篇が、心に静かな余韻を残す。

本文をチラ見せ!

広重の東海道五十三次に描かれている高麗山(こまやま)は、四季折々の風景を醸し出している。特に、国道一号線に架かる花水橋や三年前に完成した高麗大橋より見る高麗山と富士山は絶景で、広重の江戸時代から時を経ても変わりなく美しい。

高麗山の麓には高来神社(たかくじんじゃ)があり、天智天皇の時代に渡米し帰化した高句麗の王族・若光の一族が住んだ場所だと言われ、神皇産霊尊(かんむすびのみこと)、瓊々杵尊(ににぎのみこと)、神功皇后(じんぐうこうごう)、応神天皇が祀られている。…

8月16日(土)20時~

『終の棲VI ことすべて叶うこととは思わねど』
北沢 美代

誰しもいつかはかならず老いる。
そのとき、自分らしく生きられる場所とは

 
 

高齢者の“生きる”を支える老人ホームの現在と未来

「老い」とともに歩む入居者の穏やかな暮らしと一抹の不安。
志をもって介護の世界に飛び込んだ若者の思い――
ホームの日常には、より良い老後や介護のヒントが凝縮されている。
“終の棲”から生のことばで発信するルポルタージュ

本文をチラ見せ!

自分が認識していると思っていることでも文字に書き表してみて感動したものに「人は生きていればただのひとりの例外もなく老いて介護に直面する」がある。

大きく深呼吸をして、もう一度その文を読み返してみた時、その字面だけで本意を読み取っていないことに気付いたのだ。

私は「介護」といえば、私たち高齢者が受けることだと思い込んでいたということである。

私たちを介助介護している若者たちも三十年後、五十年後には…

8月16日(土)21時~

『ひとり語りのリカバリー 統合失調症の賜物』
大瀧 夏箕

わたしは本当に病だったのか⁉

 
 

語りは癒やしになる──統合失調症と向き合った一人の女性の静かな挑戦。
病名やラベルを越えて「自分として生きる」ことの意味を問いかける作品。

統合失調症と診断された著者が、自身の過去と向き合い、語り直すことでリカバリーを試みた軌跡である。診断の意味、自らの症状、その解釈に揺れながら、「自分とは何か」を問い続ける姿を描く。

本文をチラ見せ!

せんせい、一つ教えてほしいことがあるんです。

わたしは統合失調症だったのでしょうか。

そうなんです。いまのわたしは、どうやら統合失調症っぽくない。そうでしょう。そうでしょう。自分でもわからないんです。自分が統合失調症だったということを。だってわたしはいま、とっても前向き。どんどん先に進んでいこうとしているんですもの。悩みがあるとすれば、ただただ何をするにもひどく疲れやすいということだけ。

せんせいも思われるでしょう? いまの様子だと、とても好ましい回復ぶりだって。…

8月16日(土)22時~

『かれらの世界』
えんどう としこ

育てるのではなく、ともに歩み、ともに生きる。

 
 

障害という枠を超え、目の前の「かれら」と真剣に向き合う。
教育や支援を超えた先に、本当の「共生」がある。
子どもたちとの日々から見えてきた、成長の軌跡と向き合うべき現実。 誰もが生きやすい社会とは何かを問う一冊。

支援教育の現場から見えた、未来へのヒント。

本文をチラ見せ!

自閉症という名称さえ知らなかった私が自閉症の世界の扉に手を伸ばしたのは、特別な思い入れがあったわけでも何でもなく、近所付き合いがきっかけだったに過ぎない。

私たち家族は、昭和四十八年から千葉の埋め立て地にできた団地(当時流行り始めていた公団住宅)に住んでいた。ここの住人は年代的に家族構成が似ている家庭が多かった。同じ棟の隣の階段の二階に住む家族の兄弟は我が家の長男、次男と同い年ということもあり、親しく行き来していた。その家のJ君は二歳過ぎからお母さんの悩みになり、しばしば涙ぐんで話すことが多くなった。確かにJ君の行動を見ると、…

8月17日(日)7時~

『アリゲーターブリッジ』
菊谷 保

雪に閉ざされた屋敷で遺産を手にするのは誰か?

 
 

莫大な遺産をめぐり、爬虫類が棲む湖上の邸宅に集められた山吹家一族。当主の遺言状には既に遺産は児童養護施設へ寄付したとあった。やがて立会人が襲われ、養女の代理として出席した探偵・美羽瞳は事件の真相に迫っていく。

本文をチラ見せ!

――足が生えている。しかもゴミ箱から。

冬。十二月。肌を刺す北風が吹き、宵闇の空には粉雪が舞っている。
家々の明かりが淡く灯りはじめ、灰色だった世界が薄く色づいていく光景は、まるで一枚の絵画のよう。
時刻は夜の六時過ぎ。そんな幻想的な街角に建つ、五階建てマンションのエントランス内での出来事だった。

「たふけてくらはーい」

そのスリムで円柱状をしたゴミ箱は、…

8月17日(日)8時~

『腫瘍内科が拓く がん医療』
福岡 正博

患者も医療者も知っておくべき、これからのがん医療の全容がわかる一冊

 
 

がん医療の要となる「腫瘍内科」。
半世紀にわたりがん医療に取り組み、腫瘍内科創設に尽力した著者が、その意義と将来性を解説。

がん治療を左右する、知られざる診療科の最前線に迫る。
・なぜがん医療に腫瘍内科が必要なのか
・臓器の種類を問わず、幅広く薬物療法を担う腫瘍内科の専門性と使命
・チーム医療を導く、腫瘍内科の「がん医療の司令塔」としての役割」
・「患者にとって最良のがんセンター」を目指した市立病院の挑戦

公益社団法人日本臨床腫瘍学会理事長 南 博信
急速に進歩するがん薬物治療は誰が担当すべきか。腫瘍内科の草分けである著者が明確に答えている。
すべての日本人に本書をお薦めしたい。

本文をチラ見せ!

医学、医療が進歩したとはいえ、“がん”が治りにくい病気であることには変わりはない。わが国の死亡原因を見ると、1981年以来“がん”による死亡が第一位の状態が続いている。2023年の人口動態統計によると、全死亡者数157万人余りのうち、悪性新生物(がん)による死亡者数が38万人余りで24.3%を占め、4人に1人は、がんで死亡したことになる。がんは遺伝子の異常によって起こるとされ、年齢を重ねるとともにそのリスクは増加し、…

8月17日(日)12時~

『楽ではない お金もかかる 大変なだけ それなのになぜ行った!?』
本間 照雄

「なぜ行ったのか」は、歩いてわかる。

 
 

50日かけて一人で歩いた1300キロの四国遍路。
楽でも安くもない旅路の中に、自分と向き合う時間があった。

本文をチラ見せ!

うとうとしながらジャンボタクシーの窓に寄りかかり、流れ過ぎる大海原を眺めていました。突然、金剛杖を手に菅笠をかぶり、ひたすら歩く白装束姿が目に入り、あっという間に追い越しました。そのひたむきな姿は、雲水の修行姿そのものでした。目の前の一歩いっぽを重ねる姿に、これからの人生の有り様を重ね、「四国八十八ヶ寺を歩いてみたい」。こんな気持ちがふつふつと沸き起こりました。

40年にわたる長い現役生活の終わりを目前にして、退職したらやってみたいことは…

8月17日(日)14時~

『生きる本当の意味とは?』
高田 佳世子

本当の自分に出逢う旅へ

 
 

魂の声に耳を澄ませたとき、人生は静かに動き出す——。
様々な人の心と体を癒してきた舟木正朋氏の言葉と、 その魂に触れた感動の軌跡を綴る一冊。

本文をチラ見せ!

私が医学博士 舟木正朋先生と出逢ったのは今から三十年以上も前のことになります。
初めての講座で先生は「あなたがたに〝ひと味ちがった人生〟を送っていただきたくて、こうして広島よりお話に来ています(先生は広島の方なので)」とおっしゃいました。
そして、「マイナスをプラスに変えるのは魂しかありません」と、きっぱりと言い切られました。
当時のお話はよくおぼえていないのですが、この二つだけは今でも忘れられない言葉です。…

8月17日(日)18時~

『菟狭津彦が見た倭国の歴史』
宇佐津彦 清智

幻想を越えて、真実の倭国へ

 
 

九州の地に眠る記憶をたどり、幻想を越えた
リアルな倭国の姿を描く歴史探訪記。
宇佐国造の血脈が導く歴史の深層に迫る

宇佐の古代豪族「宇佐国造」の末裔である著者が、自らのルーツと倭国の歴史をたどるため、九州を中心に各地の古墳や伝承地を巡る。既存の定説にとらわれず、地形・考古資料・文献から独自に考察した20章にわたる歴史調査報告を通して、新たな歴史の輪郭を描き出す。

本文をチラ見せ!

稲用(いなもち)家というのは、宇佐公豊が鎌倉御家人として稲用太郎を名乗ったところからはじまる。中津市三光西秣(にしまくさ)に屋敷を構え、泰源寺というお寺を菩提寺としている。昔はこの辺りは野仲郷弁分で、三十町の荘園を管理する猪山(いやま)八幡宮の経営に充てていた。同族に安心院(あじむ)家があり、大友宗麟との戦いで滅亡する。この歴史調査報告書を書き上げる前に、わたしは先祖の墓にお参りをした。人の一生というのは、決してその人ひとりだけのものではない。…

8月17日(日)19時~

『BLUE EYE』
藤堂 ラモン

人類の敵は、最も身近な生物だった!

 
 

無人島で遭遇した蚊の大群。逃げ込んだ研究所に潜むのは、美しくも恐ろしい青い瞳の生物兵器だった。
血を吸うだけでは終わらない、静かな殺戮がここから始まる!生き残りをかけた極限のバイオサスペンス!

テレビクルーが訪れた無人島での異変。大量発生した蚊の正体は?
青い目の男が生み出した“美しき生物兵器”が、日本をバイオテロの恐怖に陥れる。
標的は東京ドーム——密閉された空間で、人々を襲う無数の「ブルーアイ」。
最強の吸血蚊VS. 父親——家族を守るための戦いが始まる!

本文をチラ見せ!

地下鉄の擦り切れた階段を上ると、外は小雪が舞っていた。師走の銀座は、いつものようにクリスマスセールで賑わっている。世界を襲ったパンデミックも終息に向かい、人々は個人的な不幸でも抱えていない限り、恒例のお祭りムードに引き寄せられる。そんなプラスのオーラが充満している街角へ、男はあてもなく一歩を踏み出した。

窪んだ眼窩とこけた頬は、とても三十代には見えない。広くせり出した額、その頂で晩秋の芒野のように揺れる眉。ひどくのっぺりとしたその顔は、幽鬼とでも呼ぶのが相応しい。…

8月17日(日)20時~

『インドシナ・エレジー』
柴田 和夫

歳月を経てなお色褪せない、南国での人のぬくもりと哀歌

 
 

外交官としてインドシナの各地を巡った著者が紡ぐ、なつかしさと哀感に満ちた回想録。
色鮮やかな記憶と哀愁が交差するエッセイ集。

元外交官である著者が、インドシナ半島を中心とした南国での記憶を振り返りながら綴ったエッセイ集。タイやベトナム、ラオスなどの地での勤務経験、現地の文化や食、風景、人々との出会いが、哀愁を帯びた筆致で描かれる。
「失われたもの」への追悼と「今なお心に残る風景」への愛情が刻まれた追憶の書。

本文をチラ見せ!

厳しい冬の寒さが去り行き、若葉が目に眩しい風薫る季節を迎えると、「かぐわしい南の風の吹くころ、朱欒(ざぼん)の花がにほひます」という北原白秋の詩を思い出します。

南風の故郷、南国。その南国の一つタイの首都バンコク、私はこれまでに三度、また、バンコクのほかにもタイ北部の薔薇と呼ばれるチェンマイ、美しいガーデン・シティのシンガポール、地上最後の楽園と言われるインドネシアのバリ島に勤務したことがあります。

南国のさまざまな国で暮らした懐かしい日々の記憶は、…

8月17日(日)21時~

『奇跡の贈り物』
かつくり

たとえ姿が見えなくても、声が聞こえなくても、あなたは確かにそばにいる。
本当にあった出来事で綴る、奇跡の物語――

 
 

深く愛し合うチッケとクーカ。かけがえのない幸福な日々を紡いでいた二人だが、突然の病によってクーカはこの世を去ってしまう。
クーカを失い、どうやって生きていけばよいのかわからずにいたチッケ。しかし間もなく、彼女の周りで不可解な現象が次々と起こっていることに気づく。
完璧なタイミングでの友人からの電話、故障していたはずの時計が動き出す……不思議なことが起こるたびに、青く光る奇妙な石。これらすべてが偶然なのか、それとも――?
「意識とは何か?」「肉体が滅びても人は生き続けるのか?」
量子力学、脳科学、哲学的思索を織り交ぜながら、愛する人を失った悲しみと、それでも失われない絆を描く感動作。

本文をチラ見せ!

皆さんは普段意識について意識して考えたことがありますか?

『我思う 故に我あり』はデカルト心身二元論。プラトンはまた別の二元論を唱え、日本の哲学者は中立的一元論とか……。心と身体は一体全体どうなっているのかを哲学、脳科学、物理学等、あらゆるジャンルの研究者達が各々の論理を展開しています。

この物語はフィクションですが、実際にあったことが綴られています。

登場人物の名前は架空の名前、エイリアンは病魔を指します。物語は、深く強く愛し合うクーカとチッケを病魔が襲い、二人が引き裂かれるところから始まります。…

8月17日(日)22時~

『するすみ九郎』
三崎 暁子

歴史が語らなかった義経の“心”に迫る。

 
 

平家を滅ぼし、名将と讃えられた源義経。だが、その栄光の裏には、兄・頼朝との断絶と、深まる孤独があった。史実をなぞるだけでは見えてこない、傷つきながらも生きた義経の心の姿を描いたもうひとつの物語。

本文をチラ見せ!

絡げた裳裾(もすそ)を水飛沫《みずしぶき》で濡らし、川底の小石の上でよろめく足元を確かめつつ、妻は水遊びの子を呼んでいる。

陽の光は煌めき、水の飛沫、飛ぶ虫の翅《はね》、笑う子の白歯、脇に置いた太刀の鍔《つば》の上に揺蕩《たゆと》う。

「お方様、水の中さ入らねぇで、戻ってくなんしぇ」

下女のきぬが水を跳ね返しながら川に入り、妻の脇を通って娘の方へと急ぐ。水の中に座っていた娘を抱き上げてきぬが岸辺に戻ってくると、…

8月18日(月)8時~

『私ももっと、手を抜きたい』
さおり

それでも、うちの子は笑っています

 
 

自閉症の子どもを育てるということ。それは想像を絶する葛藤と、想像を超える愛に満ちた日々だった――。本書は、自閉症の娘と息子を育てる母親が、診断、育児、社会とのズレ、そして自身の心のゆらぎを記録した、涙と気づきに満ちた一冊。

本文をチラ見せ!

はじめまして、こんにちは。

私は、自閉症児2人のひとり親をしています。

――1979年生まれの私。

――特別支援学校に通う2009年生まれの娘と、特別支援学校に通う2011年生まれの息子。

みなさんの周りには、自閉症のお子さんを育てている方がいますか。

その親御さんが、具体的にどういったことで困っているかどうかを聞いたことがありますか。…

8月18日(月)12時~

『Northern Colors Ⅱ』
華優

 
 

北海道・道東道北の自然と野生動物たちを、美しい写真と情感豊かな文章で綴った一冊。
タンチョウの優美な舞い、キタキツネの鋭いまなざし、ワシの鮮やかな嘴と足——著者が自らの足で追い、出会い、切り取った一瞬が、読む者の心を打つ。
知られざる生態や習性に触れながら、私たちを“本物の自然”へと誘う、生命の記録。

本文をチラ見せ!

2022年10月7日、羽田空港7:05発女満別空港行JAL565で道東へ向かう。自宅の最寄り駅で始発から2本目の電車に乗ったが、東長崎駅で人身事故が発生した為、さしあたり江古田駅までしか運航できないとのアナウンスが入った。

「ヤバイ」と思ったが、練馬で大江戸線に乗り換え、大門・浜松町に出てモノレールに乗れば、当初の羽田空港到着予定時間より10分程度の遅れで着けることがアプリの検索で分かり、ホッとする。…

8月18日(月)14時~

『ケルベロスの唄』
佐々木 啓文

太平洋を越えて夢を追う者たちが集まる、フロリダの熱気と孤独——

 
 

日本食材の問屋業者として働くリク。彼の周りには、奇妙な縁で結ばれた移民たちがいた。
美容師のヒカル、日本食レストランのオーナー・ショウゾウ、そこで働くハルカ、ダイスケ、マサ、そして神秘的な魅力を放つストリッパー・ジャムプーン。
孤独で厳しい仕事をしながら、夜は仲間たちとの饗宴に身を委ねるリク。
しかし、彼らの世界はある事件をきっかけに徐々に崩れ始める――。
自らの物語の結末を知ったリクが選択した、運命とは。

本文をチラ見せ!

まだいまも軽い耳鳴りがする。それに、いつもより嗅覚が一層鋭敏になっているせいで、思わず顔をしかめて息を止めた。

さっき車を降りたときに見た月は、確かにほのかな火薬のような香りがした。そして、スパイシーなムスクの香水と、黒人女性のデリケートゾーンに塗られたローズ系のデオドラントなどが湯に溶けて混ざり合い、古い壁画の記録のように染みついた脇汗の臭いに熱されて乾いたものが、止めた呼吸の血流に紛れ込んで体中をめぐっている。…

8月18日(月)18時~

『魔女汁』
坐和 正

「魔女汁」を巡る、愛と復讐のダークファンタジー。

 
 

重傷の殺し屋・イチコが辿り着いたのは、虫料理と謎の酒“魔女汁”を供する居酒屋「一匹ぼっち」。記憶を映す魔女玉と共に、自身の過去と闇の宿敵との因縁を追体験していく。
父の死、裏社会の愛憎、そして明かされる魔女の血——。
これは壮絶にして妖しく、美しくも残酷な、虫の魔法と記憶の物語。

本文をチラ見せ!

丸い月が煌々と照る夜、無名の昆虫学者が開け放たれた屋敷の畳の上でひっそり息を引き取った。老衰による孤独死である。虫の知らせでもあったのか、その数日前、彼は終活のような行動をとっていた。せっかく書き上げた論文を庭で燃やし、穴を掘って埋めたのである。ちなみに論文のタイトルは『虫の多様性』であった。

表紙がめくれ上がるように燃えて、次に現われたページには『虫人間』『人間社会』『潜む』『調和』とかの文字が多くあった。しかし速読の達人でなければ解読は不可能に近く、…

8月18日(月)19時~

『月海』
月原 悠

想いは、香りになって

 
 

高校で出会った沢田と妙子。紫の蝶が運んできた恋は、ラベンダーの花に込められた想いとともに深く育まれていく。結婚し、幸せな日々を送る二人だったが、突然の悲劇が彼らを引き裂く。
妙子を襲った火災事故。沢田は愛する人を守るため、自らが罪を背負い網走刑務所へ。一方、深い傷を負った妙子は、醜い姿になった自分を恥じ、愛する人から遠ざかっていく。
三十年という長い歳月が流れても、二人の心に宿る愛は決して消えることはなかった。星空に輝くふたご座のように、どんなに離れていても結ばれている魂があることを、この物語は静かに、そして力強く描き出していく。
真の愛とは何か。人は愛する人のためにどこまで犠牲になれるのか。季節が巡り、時が流れても変わらない想いがここにある。
運命に翻弄されながらも、最後まで愛を貫いた男女の、涙と感動の純愛物語。

本文をチラ見せ!

寄せては返す記憶の波は時を懐かしむように、心を揺らしながら、極寒の地、網走刑務所から、沢田は出所することになった。雪は降りしきっていた。風は冷たく心を切り刻んで、途絶えた数多くの妙子からの手紙をバッグ大事にしまいながら、駅へと向かった。

網走駅にはストーブが並び、その上のやかんから立ち上る湯気は、まるで春の日差しに揺らめく陽炎のように彼を温かく包み、冷たい空気の中で一瞬の温もりを感じさせた。

小柄な駅員は沢田が時間を持て余しているのを見かねたのか、…

8月18日(月)20時~

『ペットアロマホームケア』
吉永まり

薬も効かなかった不調が、おうちのケアで変わりはじめた

 
 

薬だけでは解決しないペットの不調に、エッセンシャルオイルの力で応える自然療法を紹介。 「ペットアロマホームケア®」第一人者の獣医師による、ペットと飼い主が共に健康で幸せに暮らすためのホームケア実践ガイド。 医学的根拠に基づいたエッセンシャルオイルの活用方法を、豊富な症例とともに掲載。

本文をチラ見せ!

私は獣医師であり、「ペットアロマホームケア®」の指導者を育てる仕事をしています。私が代表をつとめるPHAJ(日本ペットアロマホームケア協会)では、エッセンシャルオイル(精油)を使いながら、ペットと楽しく健やかに暮らすことを目的とした活動をしています。
私も西洋医学の獣医師ですから、もしペットが病気になって、薬ですぐに楽に治せるなら、そのほうがいいと思っています。…

8月18日(月)21時~

『ボイス・リミット』
松本 悠佑

第6回小説コンテスト大賞作品。

 

ある日、人間が出せる声は有限だと判明した。
声を出すといつ死んでもおかしくない世界で静かに生活していた岡本裕翔は、声を出して話し続ける同級生の北山桜空と出会い、人生が一変する。
声が有限の世界で大好きな人ができたとき、声に出して伝えたい想いが溢れ出す。
切なくも美しい青春ラブストーリー!

本文をチラ見せ!

人類は、無限に声が出せると思っていた。声に限りなどないと誰もが思い込んでいた。
しかしある日、声は無限ではないことが世界中に知れ渡った。人間が出せる声の数は有限であり、発声が上限に達すると心不全により即死してしまうということが判明したのだ。
この上限には個人差があり、あとどれくらいで限界を迎えるかは誰にも分からない。そして誰も声を発しようとしなくなった。
 
   *
  
ジリリリリ♪
目覚まし時計を止め、眠そうな顔で朝を迎えた高校一年生の岡本(おかもと)裕翔(ゆうと)は、声を出さずに欠伸(あくび)をしていた。身支度(みじたく)をして食パンを口に咥(くわ)え、黙って玄関を出た。
「おはよう」も「いってきます」もない、いつもの朝だった。
 
人間の声が無限ではないことをアメリカの研究者が公表した時、世界は大混乱に陥った…


今月もお楽しみに!