【前回の記事を読む】声優業界に付き人は存在しない。声優事務所においてマネージャーとは、営業部の社員のことを指す
一 声優になるとは、どういうことなのか
マネージャーによって言うことが違う、これは声優事務所の最大の問題だ。人間は人それぞれもともと言うことが違って当たり前なのだが、そういうことではない。
アニメを担当するマネージャー、外画(洋画や海外ドラマの吹き替えのことをいう)を担当するマネージャー、テレビ番組関係のマネージャー、CM関係の担当など様々な営業担当がいるが、それぞれ演者に求めるものが全く違うという問題だ。言い方が違うという類ではない、相反するものを求めてしまうのだ。そのため両方を追求することが基本できない。
しかし声優は、アニメもゲームも洋画や海外ドラマの吹き替えも、番組のナレーションやCMナレーションも、何でもやりたい。少なくともそう望む声優が大半だ。
例えば、モデルさんが雑誌もショーもテレビも何でも出たい、と言うのとさほど変わらない。担当マネージャーにいかににして自分を売り込んでもらうかを必死に考え、日々美しさに磨きを掛ける。グラビアタレントならそれでいいだろう。声優はそうではない。
複数のマネージャーと話す必要があり、それぞれ言うことが違う。担当分野よって違う表現を要求する。担当マネージャーがどう売り込んでくれるか、ではないのだ。どんなにトップの声優になっても同じことを悩んでいたりする。鵜呑みにしては潰れかねない危険なアドバイスが日々頻繁に飛び交う。
新人声優の場合、それぞれのマネージャーが何か言ってあげようと頑張り、一方で声優は全ての話を吸収しようと必死になる。結果ちぐはぐな芝居が生まれてしまうのは仕方がないことなのだ。
神野慶太チーフマネージャーの人となりは後ほど触れることにして、まずは新人声優四人と神野の話を聞いてみることにしよう。