一‐一 声優になるとは、どういうことなのか ~清水悠子~
清水悠子(しみずゆうこ)は、声優になることを目指している。幼い頃からアニメ作品を観るのが大好きで、アニメに出演できる声優になるのは学生時代からの夢だった。
東京の下町出身で、元気でお転婆で可愛い女の子と近所でも評判だったが、中学生になると一転、清楚なイメージの子になったと周囲の人は記憶している。両親が高校の教師というのもあったのかもしれないが、元来はそういう性格で、幼い頃のお転婆は単に快活だっただけということだったのかもしれない。
運動神経も悪くなかったと思うが、中学時代は放送部、高校時代は演劇部に入っていた。その頃から夢であった声優を意識しての部活選びだったことは言うまでもない。将来は声優になる、そう心に決めて揺らぐことはなかった悠子だが、両親にはなかなか言いだせなかった。
結局大学は普通に受験し、成績は優秀だったのもあって有名私立大学に合格、両親を喜ばせた。しかし、声優への想いは捨てきれず、アルバイトで貯めたお金を全部つぎ込み、こっそり声優養成所の夜間ワークショップに通った。そのワークショップから赤坂事務所のオーディションを紹介され、参加。見事に、赤坂事務所の預かり生となった。
預かり生とは、事務所によってその扱いも異なるが、一般にいう、査定のある仮所属タレントといったところだ。声優事務所では、そういった新人を「預かり」「研究生」などと言っているが、悠子は大学に通いながら赤坂事務所の預かり生となった。