はじめに

この書には何人かの声優が登場する。ご期待を裏切るようで申し訳ないが、全て実在する人物ではない。この報告は完全なフィクションである。

ただ、筆者は実際に起きていること=真実のみを書こうと努めた。実在しない名前によるフィクションなわけだから、どんなことを浮き彫りにしようと信じない人もいるかもしれないが、この本を書くことで様々な人の迷いを吹き払うと考えている。

この本に書かれている〝事実〞を知って、一時的に落とし穴に嵌まったと感じてしまうような人が中にはいるかもしれない。しかしそれは一時的なことで、流れを理解してそれに乗れば、今まで以上に大きく美しく流れていくはずだ。少なくとも私はそう信じている。

この白書は、基礎でもなければ基準でもない。実際に現場で起こっている問題に正面から向き合い、その解決に努力し、真実に向き合うことで見える声優という生業を考えた報告書である。

一つの命題について、一つの対談が実際にあったかのように書いているが、それは理解しやすさを考えたうえの〝演出〞であり、それ自体は現実ではない。伝えたい真実を活字にして伝えるには、逆に演出が必要であると筆者は考えた。

この書で起こっている話を頭の隅に置いてもらって、〝表現とは〞〝声優とは〞何なのかを考えるきっかけになってくれればと思っている。