【前回の記事を読む】声優は事務所に所属すれば安泰? マネージャーが明かす“プロではない”非情な現実
一 声優になるとは、どういうことなのか
一‐一 声優になるとは、どういうことなのか ~清水悠子~
神野 しかし清水の場合、一年近く経って、査定も近いのにこの仕事量じゃ、不安になるのも無理はないなぁ
清水 そうなんですよ、そこですよ。私のお芝居って、何か決定的に駄目なところでもあるんでしょうか? レッスンとかだと、特に何も言われないんですよ。でも、手応えもないし仕事も無いし……
神野 うーん、何が駄目の前に、何が長所だと自分では思っているのかな?
清水 長所ですか……ワークショップ時代から先生に言われていたのは、清水は芝居が自然でいいって言ってもらいました。私も等身大の演技で人を感動させられるような、そういう芝居がしたいって、ずっと思っています
神野 うーん、清水は、新劇は好きか?
清水 あの……前にも聞かれたんですけど、新劇ってよくわかっていなくて、要するに舞台のことですよね?
神野 いや、違うな。舞台全般のことじゃない。新劇の舞台、そういう系統の芝居が好きか?って話だが、そこを未だに知らずにやってるのか
清水 すみません、わかってないです
神野 高校時代演劇部だっただろう。どうやら顧問の先生は新劇じゃなかったようだが、新劇の舞台くらいは観たんじゃないのか
清水 多分観てないです、というか、よくわかってないです
神野 そうか……
新劇とは何か。それをここで説明するのはとても難しい。「新劇とは何か」それはつまり「声優とは何か」と訊いているようなもので、一言ではとても言い表せない。
誤解を恐れず簡単に言うと、歌舞伎などの旧劇に対して、喋り言葉での舞台が新劇ということになるが、ここで神野が言う「新劇」とは、いわゆるクラシカルな演劇のことを指している。歴史のある劇団や国立演劇所がやっている芝居のことだ。
映画やテレビドラマなどの演技、小劇場での舞台演技(便宜上、この後、神野はこれらの演技のことを“リアリズム系”“小演劇系”などと呼ぶが)、それとは違うということを言っている。