散る桜、残る桜も……外は晴れて暖かく、病院の周りも桜が満開だった。彼女はやわらかい日差しの中、桜のトンネルの中を自宅に帰っていった。彼女の目にこの日の桜はどのように映っていたのだろうか。そして10日後、母親の震える涙声が電話を通じて伝えたのは、彼女がテレビゲームを10時頃まで楽しみ、もう寝るわと言って横になった直後、「苦しい、息ができない!」と叫び、口から真っ赤な泡立った血が溢れだし、それっきり…
[連載]Passengers
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エッセイ『Passengers』【第16回】桂 真風
電話で「苦しい、息ができない!」と叫び…母の壮絶な最期
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エッセイ『Passengers』【第15回】桂 真風
結核再燃…入院を嫌がる患者に医師は「じゃあね、こういう案はどう?」
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エッセイ『Passengers』【第14回】桂 真風
「もう嫌、なんで治らないのよ」結核の少女が抱えたストレス噴出
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エッセイ『Passengers』【第13回】桂 真風
なぜこの若さでこんなことに...医師が思い出す「薄幸の美少女」
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エッセイ『Passengers』【第12回】桂 真風
一見“ヤンキー”風だが…結核の彼女を支える男の深い愛情
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エッセイ『Passengers』【第11回】桂 真風
「人懐っこい笑顔」からは想像しがたい…彼女の1年半前の姿
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エッセイ『Passengers』【第10回】桂 真風
患者の最期の瞬間…残された家族のために医師がする「演出」
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エッセイ『Passengers』【第9回】桂 真風
「先生、良くなりますか?」死が間近に迫った患者と向き合うということ
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エッセイ『Passengers』【第8回】桂 真風
医師の後悔…「最後の旅行」に出かける患者家族に投げかけてしまった“言葉”
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エッセイ『Passengers』【第7回】桂 真風
嘘に嘘を重ねて疑心暗鬼に…「病名を伏せた治療」の苦悩
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エッセイ『Passengers』【第6回】桂 真風
私は何の病気でしょうか…医師が語る「患者と家族への伝え方」
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エッセイ『Passengers』【第5回】桂 真風
徐々に世間の匂いを失う入院患者…新米医師が感じた「医療者」対「患者」の図式とは
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エッセイ『Passengers』【第4回】桂 真風
【医師の告白】私は彼の冷たい手を握り、「ごめんね」と耳元でささやいた。
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エッセイ『Passengers』【第3回】桂 真風
「本当はあと1、2年の命かもしれないが…」医師の辛い胸の内
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エッセイ『Passengers』【第2回】桂 真風
患者の普段着に違和感…「病気であることが日常」という非日常
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エッセイ『Passengers』【新連載】桂 真風
医師の本音…外科医はいつも何かしら「不安」を抱えているワケ