翌日日曜日。僕はお前の部屋にいた。着いて早速寝室に向かったがお前は居らず、その気配は風呂場にあった。時刻は十三時。入浴にしてはだいぶ遅いと言えるが、お前がいつ起きていつ風呂に入ろうがそれは勝手だし、僕が連絡をしたのもつい二十分前ことだからまぁ、しょうがない。僕は適当に椅子に座り、お前が出てくるのを待った。窓側、カーテンは閉め切られている。立ち上がって織部色のそれに手をかけて左右に開くと、窓ガラス…
[連載]綻ぶ糸を手繰り寄せ
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【最終回】ホエラニア
本当にこのまま弱っていくんじゃないか…不安に駆られた僕が話しかけ続けると、お前はふと顔を上げ、「あのさ、」と…
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第12回】ホエラニア
「少し、しゃべ、るよ」酷い怪我のまま、配信に来た親友。笑っているけど、僕には、それが本当に笑顔なのか分からない。
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第11回】ホエラニア
お前がいない、二週連続の一人ぼっち配信。視聴者から、心無い者による危害を疑う声が上がる。その時、玄関で物音がして…
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第10回】ホエラニア
「構ってちゃんとか嫌いなんだよ。ほっといて欲しいなら一生そうしてろ」足音を荒げて部屋を出たが…あれ?違和感。あれがない。
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第9回】ホエラニア
「本当に事故なの? 酔っぱらって転んだにしては、ちょっと…本当に酷い怪我だよ。何だか怖い。遠くに行っちゃう気がして」
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第8回】ホエラニア
「なぁ、何か言って」そっと肩に触れる。教えてくれよ、お前に何があったんだ? 何か言ってくれよ、泣くだけなんておかしいだろう、お前、お前。
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第7回】ホエラニア
殺してやる...背中でもさすってやろうとした途端、お前の体が跳ね、僕の手が振り払われる。隻眼が僕の目を貫き、僕に襲いかかり、確かにこう言った。
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第6回】ホエラニア
そこから血と鼻を突く臭いがして、ゴミ袋を見やる。お前の服が死んだねずみの塊みたいに固まっている。
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第5回】ホエラニア
死に直面した人間が吐き出すような絶叫に、尋常でない様子の親友を訪ねる。扉が人一人分きっちりと開いて、僕の目の少し下辺り、お前の頭が揺れている。
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第4回】ホエラニア
ライブ配信中に親友が上げた叫声。どんなホラー実況よりも恐ろしい叫びに、一瞬にして実況画面は混乱に陥った。これは記憶の中の音で幻聴なのだろうか。いや、僕は知っている...
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第3回】ホエラニア
「いたあああああいいいいいいいいよおおおおお」錆びた釘束を血反吐と一緒に吐き出しているような悲鳴が、かろうじてお前とわかる声音で耳をつんざいた。
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【第2回】ホエラニア
予定の時間に来ず、電話に出ず、配信をすっぽかし、僕を無視する。この十数年間を共にした僕を。
-
小説『綻ぶ糸を手繰り寄せ 』【新連載】ホエラニア
玄関を覗いたが、物音一つ気配すらなかった。数通まとめてメッセージを送った。注意、怒り、心配、呼び掛け。だが、お前はいない。