第2章 半透明な夢
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翌日日曜日。
僕はお前の部屋にいた。
着いて早速寝室に向かったがお前は居らず、その気配は風呂場にあった。時刻は十三時。入浴にしてはだいぶ遅いと言えるが、お前がいつ起きていつ風呂に入ろうがそれは勝手だし、僕が連絡をしたのもつい二十分前ことだからまぁ、しょうがない。
僕は適当に椅子に座り、お前が出てくるのを待った。窓側、カーテンは閉め切られている。立ち上がって織部色のそれに手をかけて左右に開くと、窓ガラス越しうっすらと僕の姿が写る。その奥はベランダになっており、落下防止用の手すりが防波堤の様に立っていた。
高層階に位置するお前の部屋は薄雲った空には届かず、地上を行き交う人々や車からも遠い。
しばらく広がる街並みを眺めていると、ガラスにお前の姿がぼんやりと映った。振り向き、その姿がほとんど下着一枚だった事に何となく目を伏せる。
お前は部屋に僕がいる事に少し驚いた様で、小さく声をあげると風呂場に戻って行った。どうやら連絡は伝わっていなかったらしい。悪いことをしたな。僕は居心地が悪くなって、部屋の中を彷徨(さまよ)い歩き、結局はパソコンデスク前の椅子に座った。
しばらくするとお前が現れ、今度はしっかりとバデルのスウェットを着込んでいた。灰色の、切りっぱなし。お前本当に灰色多いな。けれど顔は。
直視できなかった。
「ごめん、急に来て。一応連絡入れたんだけど」
お前は僕に顔を向けずに寝室に向かうとすぐに引き返して来た。その手にはスマホが握られており、ああ、と一言呟くと気付かなかったと零す。