第2章 半透明な夢
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土曜日。
戦々恐々とこの日を迎えた。SNSにて今日は一人配信でお送りしますとだけ伝えたが、僕は内心ゆくゆくは配信自体が消滅してしまうのだろうなと思っていた。そうなれば本当に居場所がなくなるのだろう。
十八時五十九分。
恐ろしい時間が目に飛び込む。
先週の今頃、僕はお前の連絡を待っていた。それからお前の家に行き、そこに誰もいないことに愕然として、更に連絡がつかないことに奔走し、結局どうにもならなかったことに絶望したのだ。
今の僕は、どうだろう。絶望の向こう側はどうだった?
座椅子に背中を預けて目を閉じる。
眠りの前の浮揚感。そのまま滑って行くのに僕は抗うことができなかった。
指先にざらつく刺激を感じた。目を開けると、愛猫が僕の投げ出された左手指を舐めていた。彼女は目を覚ました事に気付くと目を二、三度瞬(しばたた)かせてから膝に擦り寄り、また開いた扉の隙間から出て行く。僕はそこに確かな彼女の愛情を感じ取り、少しだけ落ち着いた。そして時刻を確認し、配信開始十分前であることに非常に慌てる。
猛烈な独り言と共に最終確認を行う。
そうして始まった、二週連続僕だけの一人ぼっち配信。
開幕直後の謝罪は慣れた物もので、取り繕って当たり障りのないことを並べ立てる。
ディスプレイの中3Dアバターが僕の動きに合わせて小さく動いた。今後の活動は縮小すること、ゲーム配信は僕だけでやること、スケジュール通りにはいかないこと、タグ付けされたグッズの販売も停止すること。