俳句・短歌 四季 2022.04.14 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第101回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 目が覚めて薄く明るい暁の 今を生きてる貴重な世界 数階の上の方より木々望む 均整の美に膨らむ緑 緑みどり成なす木々に漂い悲しげに 紋白蝶の白き妖精ようせい
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『溶けるひと』 【第10回】 丸橋 賢 「死んでもいい」今までの過ちと覚悟を激しく息子に訴えかける母。息子を正そうとするも、母は自らの鈍感さに気づき、息をのんだ。 これを何とかしなければ地獄が待っているのだ。実知は布団ごと知数を強く揺さぶった。「知数、起きてちょうだい。ここに座って。お母さんの話を聞いて、考えてちょうだい。私は本気よ。お前が元気になるなら、私の命なんかいらないと思っている。命をかけて、お前と話し合いたいの、それができなければどうなるかわかっているじゃないの。お前も私もお父さんも、先がなくなるだけなのよ。私たちは、だから、選ばなければいけない…