俳句・短歌 四季 2022.04.14 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第101回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 目が覚めて薄く明るい暁の 今を生きてる貴重な世界 数階の上の方より木々望む 均整の美に膨らむ緑 緑みどり成なす木々に漂い悲しげに 紋白蝶の白き妖精ようせい
エッセイ 『逆境のトリセツ[パラリンピック特集]』 【新連載】 谷口 正典,益村 泉月珠 右足を切断するしか、命をつなぐ方法はない。「代われるものなら母さんの足をあげたい」息子は、右足の切断を自ら決意した。 失うのは生命か右足か究極の選択まだ寒さが残る三月。午前二時。ピンポーン。「こんな時間に誰?」上着を羽織りながら玄関を開けた。そこに立っていたのは、背筋を伸ばした警察官だった。「正典さんのご家族の方ですか」「正典の母です。どうかしたんですか?」「正典さんが、国道二号線でトラックとの事故に遭いまして……」「え……、正典は無事ですか?」「現在、病院に搬送中です」動転した母は、兄と一緒に俺が運ばれた病院…
小説 『ツワブキの咲く場所』 【第22回】 雨宮 福一 祈ったところで、何になるんだろう…カルト教団に洗脳され、結びついた両親。壇上に立つ老人は救世主でも神様でもなかった。 【前回の記事を読む】子どもの私が、教祖と呼ばれていた壇上の老人に手を振る。思い出すのは、大人達の狂った言動と、視野が血で赤くなるほどの暴力。「こっちだ。喫煙所があるんだ」にかっと音がしそうな笑みを浮かべて、彼は私を連れていく。教会の外に設営された小さなプレハブの喫煙所の出入口はガラス戸で、カラカラッと乾いた音を立てた。備付けの椅子に腰掛けたら、教会の庭をぐるり見渡すことができる。喫煙所の内部は、…