俳句・短歌 歌集 自然 2023.11.07 歌集「緑葉の里」より三首 歌集 緑葉の里 【最終回】 上條 草雨 大いなる自然と文明遺産に抱かれて この地球(ほし)に住まう この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 朝方あさかたの雨粒あまつぶを見る柴の葉に 穀物こくもつ育つ今日より穀雨 春空はるそらに緑葉繁茂映え亘り 甲高かんだかく鳴く不如帰聞く 晴天の陽光注ぎ若葦わかあしの 緑の茎が水面みなもより伸び 【第1回から読む】歌集「緑葉の里」より三首
小説 『お嬢様の崩壊』 【新連載】 いけだ えいこ 銀行員の夫は給料五十万円のうち生活費を八万円しか渡してくれずついに… しずかは、自分がお嬢様だと思ったことはなかった。でも、最近になってやっぱり自分は周りと少し違うのかもしれないと感じていた。子どものころ住んでいた都内の家には部屋が十四ぐらいあったし、門から玄関までのスロープには車が三台くらい停まっていて、玄関ホールには大きな銅像が立っていた。習っていたピアノは日比谷でクリニックを開業している祖父の書斎に置いてあり、そこには仏像が立っていて、ピアノの練習をするとき…
小説 『天命愛憐』 【第11回】 せと つづみ わたしはほんとうに思いやりのある人がどういうものか、知っている。虐げられて苦しんでる女の気持ちが彼女にわかるのだろうか。 わたしは軽くおじぎをし、お盆を抱えて部屋を出ようとした。すると梁葦さんは、「ちょっと待って。わたし、今日はあなたにも会うためにきたの」と言ったので、わたしは身構えた。「城屋の工場のことは、いま大きな問題になっているの。元女工たちも声を上げて、闘おうとしているのよ。あなたも、このまま泣き寝入りしてはいけないわ。あなただけじゃなくて、他のたくさんの、搾取されて苦しんでいる労働者のためでもあるのよ」梁…