俳句・短歌 歌集 自然 2023.11.07 歌集「緑葉の里」より三首 歌集 緑葉の里 【最終回】 上條 草雨 大いなる自然と文明遺産に抱かれて この地球(ほし)に住まう この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 朝方あさかたの雨粒あまつぶを見る柴の葉に 穀物こくもつ育つ今日より穀雨 春空はるそらに緑葉繁茂映え亘り 甲高かんだかく鳴く不如帰聞く 晴天の陽光注ぎ若葦わかあしの 緑の茎が水面みなもより伸び 【第1回から読む】歌集「緑葉の里」より三首
小説 『約束のアンブレラ』 【新連載】 由野 寿和 ずぶ濡れのまま仁王立ちしている少女――「しずく」…今にも消えそうな声でそう少女は言った 二〇〇三年の年末。猛烈な雨が、差しているビニール傘を氷のように叩きつけている。静岡県藤市にある藤山を局地的な大雨が襲っていた。静岡県警の鳥谷(とりたに)は手に持っていた新聞を口でくわえると、慌ててしゃがみ込んだ。泥でぬかるんだ足元に、大量の水が靴を侵食する感覚が襲った。「こんな雨の中、こんなところにいたら風邪をひいてしまう。ここは危険な場所だ。お嬢さん、名前は?」少女はずぶ濡れのままその場に仁王…
小説 『約束のアンブレラ』 【第9回】 由野 寿和 キャンパスから駿河湾が一望できる被害者女性の出身大学の教授に聞き込み捜査へ エンジンをかけて白い煙を出すと、三好和希は紫藤美術大学に向かって車を走らせた。静岡中央駅から車で二十分ほどの場所にある。緑豊かな山間部に位置する坂の上にあり、キャンパスからは駿河湾が一望できる絶好のロケーションである。紫藤美術大学は、静岡県内で唯一の美術大学であり、その質の高い教育と独創性に富むカリキュラムで、東日本でも有名な美術教育機関だ。絵画、彫刻、デザイン、映像、ファッションなど、広範囲に…