俳句・短歌 四季 2022.04.07 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第100回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 枯れていた草地くさちも今は柔らかい生ける緑の草地に変わる 緑萌え鳥や虫飛び花開く自然の住まい楽園地帯 温暖な風に吹かれて庭木立にわこだち>開花を待って揺れる若枝
小説 『お嬢様の崩壊』 【新連載】 いけだ えいこ 銀行員の夫は給料五十万円のうち生活費を八万円しか渡してくれずついに… しずかは、自分がお嬢様だと思ったことはなかった。でも、最近になってやっぱり自分は周りと少し違うのかもしれないと感じていた。子どものころ住んでいた都内の家には部屋が十四ぐらいあったし、門から玄関までのスロープには車が三台くらい停まっていて、玄関ホールには大きな銅像が立っていた。習っていたピアノは日比谷でクリニックを開業している祖父の書斎に置いてあり、そこには仏像が立っていて、ピアノの練習をするとき…
小説 『天命愛憐』 【第11回】 せと つづみ わたしはほんとうに思いやりのある人がどういうものか、知っている。虐げられて苦しんでる女の気持ちが彼女にわかるのだろうか。 わたしは軽くおじぎをし、お盆を抱えて部屋を出ようとした。すると梁葦さんは、「ちょっと待って。わたし、今日はあなたにも会うためにきたの」と言ったので、わたしは身構えた。「城屋の工場のことは、いま大きな問題になっているの。元女工たちも声を上げて、闘おうとしているのよ。あなたも、このまま泣き寝入りしてはいけないわ。あなただけじゃなくて、他のたくさんの、搾取されて苦しんでいる労働者のためでもあるのよ」梁…