俳句・短歌 四季 2022.09.19 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【最終回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 低空に蜻蛉数匹浮くを見る傍そばに葦生え故里ふるさとに似る 薄曇うすくもり風も和やわらぐ夕暮れに燕もふわり頭上を過ぎた 打ち上げて実験機向け成功の中国初の女性飛行士
小説 『魂業石』 【新連載】 内海 七綺 沼のような目でこちらを覗くおじさん…通り過ぎようとしたら、ランドセルにかけた給食袋を引っ張られ、後ろから口を塞がれた。 茜色の気配が透明な青を少しずつ蝕む帰り道だった。背の高いブロック塀に囲まれた脇道の暗く湿った闇から、男がじっとこちらを覗いている。瞬き一つしない、暗い沼のような目。変なおじさんだ、と雪子は思った。姦(かしま)しく笑っている亜弓(あゆみ)たちは男にまったく気づいていない。そのまま一緒に通り過ぎようとしたら、ランドセルにかけた給食袋をつかんで引っ張られ、後ろから口を塞がれた。叫ぶ暇もなかった。亜弓た…
エッセイ 『保健師魂は眠らない[注目連載ピックアップ]』 【第13回】 真秀場 弥生 熱心な健康指導の直後に一人の女性が「健康に生きるために○○さまにみなさんでお祈りしましょう」と言い出し...... 【前回の記事を読む】体を壊し、退職してようやく気が付いた自分の立場。いざ退職すると...誰一人、私がいないために困っている人もいない。そもそも誰に言われなくても自分の不甲斐なさを自分自身が何より痛感している。けれど、「こうとしか生きようがなかった」というのが私の率直な思いなのだ。来し方を振り返れば振り返るほど、保健師は私にとっては天職だと思えてならない。公職から退いた今も、ふと気が付くと「保健師…