俳句・短歌 四季 2022.04.21 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第102回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 雨粒あまつぶの滴したたり受ける春の宵 ポツリ濡れてもまた気持ち良い 晴れやかな日曜の朝深呼吸 陽光ようこう浴びて草木くさき息づく 鴇色ときいろに此の上も無く麗うるわしく 空が照り舞う春の夕暮れ
エッセイ 『逆境のトリセツ[パラリンピック特集]』 【新連載】 谷口 正典,益村 泉月珠 右足を切断するしか、命をつなぐ方法はない。「代われるものなら母さんの足をあげたい」息子は、右足の切断を自ら決意した。 失うのは生命か右足か究極の選択まだ寒さが残る三月。午前二時。ピンポーン。「こんな時間に誰?」上着を羽織りながら玄関を開けた。そこに立っていたのは、背筋を伸ばした警察官だった。「正典さんのご家族の方ですか」「正典の母です。どうかしたんですか?」「正典さんが、国道二号線でトラックとの事故に遭いまして……」「え……、正典は無事ですか?」「現在、病院に搬送中です」動転した母は、兄と一緒に俺が運ばれた病院…
小説 『新西行物語』 【最終回】 福田 玲子 「誰か…」声が響いたその時、息が止まるかと思った。御簾をはらりとかきあげて、美しい人が現れて… 【前回の記事を読む】どぎまぎした。いきなり美しい傀儡女にひざまずかれ、「何という幸せでございましょう。本当にありがとう存じます」と…鈴を振るような笑い声が御簾(みす)から聞こえた。周りの女房達も、巡(めぐ)り合わせに驚いていた。堀川局(ほりかわのつぼね)が、乙前(おとまえ)を立たせて衣装を直してやりながら声をかけた。「それにしても乙前(おとまえ)は、監物(けんもつ)様はたいそう厳しいお方だった、…