六月二十五日 月曜日

少女と告発と海潮音 2

ふたたび、ざわめきが起こる。もはやおさまることなく、教室全体を共鳴装置にして増幅していく喧騒。その異様な波にのまれまいと、自分を律するようにまっすぐ祥乃を見すえ、桂衣子はたずねた。

「美術部の上原さんって……たしか、2-Aの……」

「はい、そうです」

「どうして、きみは、上原さんのこと知ってるの?」

「文芸部と美術部は、部室が隣どうしだから……」

「顔をあわせて、言葉を交わすくらいのことはあった。そういうこと?」

少し口ごもってから、祥乃は「はい……」と答えた。

「大事なことだから、もう一回ちゃんときくよ。きみが見たのは、まちがいなく上原さんだったんだね」

祥乃は、ためらいを振り捨てるように、はっきり「はい」とうなずく。

「でも、彼女がここでなにをしてたかまでは、わからなかった」

「はい。ただ―」

「ただ? どうしたの?」

「キャンバスとかスケッチブックを入れるような、大きなバッグをそばに置いてました」

「ふうん。美術部の彼女が、そういうバッグを持っていてもおかしくはないけど……」

(くちびる)を指でゆっくりとなぞりながら、桂衣子は考えこんだ。