ホットハウス・アース説(劇症型地球温暖化説)
2018年8月、ドイツのポツダム気候影響研究所、コペンハーゲン大学、ストックホルム・レジリエンス・センター、オーストラリア国立大学の科学者はホットハウス・アース説をアメリカの科学アカデミー紀要(PNAS)に発表しました。
この論文によりますと、たとえ今から温室効果ガスの排出量を削減しても、すでに始動している温暖化が自然界のほかの現象の引き金を引き、その結果として制御不能な温暖化が進行する可能性があるといっています。
温暖化によりアマゾンの熱帯雨林が縮小したり、北極の永久凍土と南極の海氷が解けたりすると、熱帯雨林や永久凍土や海氷に貯蔵されていた二酸化炭素が大気中に放出され始め、温暖化の進行に歯止めが利かなくなるというのです。
この現象は「ホットハウス・アース(温室化した地球)」と名づけられました。
現在、世界の平均気温は産業革命前に比べて約1度高くなっており、10年間に約0.17度のペースで上昇しています。気候変動による最悪の事態を避けるためには、産業革命前に比べた気温上昇を「2度」までに抑えることが不可欠だと、大半の専門家は考え、パリ協定で、この目標の達成に向けて世界の国々が合意しました。
しかし、この論文によりますと、世界の国々がパリ協定で合意された二酸化炭素排出量を守っても、この目標を達成することは難しいとしています。最悪のシナリオでは、ホットハウス・アース現象により世界の平均気温は産業革命前と比べて4~5度高くなり、海水面は最大で60メートル上昇するとしています。
この論文では、平均気温が2度上昇すると、重要な転換要素が活性化され(論文では10の自然現象が挙げられています)、気温がさらに上昇する、そうなると、他の転換要素がドミノのように次々と活性化されていき、地球全体がさらに高温になっていく、そして、こうしたドミノ現象は、1度始まってしまうと、(人力で)止めることはほとんど不可能であり、結局、ホットハウス・アースが現実のものとなり、地球は人が住める場所ではなくなってしまうというのです。