5500万年前のメタンハイドレート爆発による地球温暖化
6500万年前の巨大隕石の衝突により、恐竜などが絶滅し、私たちのご先祖である哺乳類が活躍する時代が訪れました。
5500万年前頃、大西洋中央海嶺からマグマが噴き上がり、激しい火山活動が起こり、グリーンランドがスカンジナビア半島から切り離され、真ん中にアイスランドが生まれました。
この海域の海底から、1997年、北西大西洋の深海底掘削と深海底堆積物コアの回収によって、メタンハイドレート爆発の直径1キロから5キロにもなる巨大な噴火口の跡が800個も見つかり、これによって5500万年前頃の火山活動の実態がわかりました。
それによりますと、スカンジナビア半島とグリーンランドの間でホットプルーム(深さ2900キロメートルの地球の中心の高温の核との境目で核の熱を受けて高温になったマントル)の上昇で大地が分裂を始めましたが、このホットプルームで地表近くに1000度近くにもなるマグマが生成されました。
このマグマの熱にさらされ、海底の有機物の中に含まれていたメタンハイドレートが爆発的な反応を起こし、海底を突き破り、巨大な噴出口を通って海中へ、そして大気中へと大量のメタンガスを放出しました。
この時放出されたメタンガスの量は2万年間で300~2700ギガトン(300億トン~2兆7000億トン)にのぼると推測されています。この5500万年前の大量のメタンハイドレート爆発は急激な地球温暖化をもたらし、地球の平均気温を10~20度も押し上げました。
このため、新生代前半の地球は非常に高い気温と湿度で、熱帯と亜熱帯が地球の高緯度の地域にも広がる異常な熱さでした。
もちろん、地球上にはどこにも、つまり北極、南極にも氷雪はありませんでした。
その後、2000万年かかって二酸化炭素が低下し(大気中の二酸化炭素が海中に、海中の二酸化炭素が石灰石となり海底に沈殿し、大気中の二酸化炭素が減少し)、温室効果が減り、地球の気温が低下し、3500万年前には両極に氷床が発達して寒冷な気候が到来しました。
南極大陸の形成と冷たい深層海流の形成(3300万年前)
3300万年前、南極大陸がオーストラリア大陸や南アメリカ大陸と切り離され、南極は極点を中心に位置する孤立した大陸となりました。
孤立した南極大陸の周りは地球の自転の影響で周囲を回る周極流という海流がつくられました。
この周極流は、赤道方面から流れ込んでいた暖流を完全に遮断してしまい、周辺の海水は急速に冷え、その海水が大陸を冷やすというサイクルが始まり、南極大陸は次第に氷の世界へと変貌していきました。
氷の世界が広がれば、アルベド効果(氷雪の太陽光の反射効果のこと。氷雪は太陽光をほとんど反射してしまいます)によってさらに冷却が進み、氷河はますます成長して南極大陸全体をおおってしまいました。
南極大陸が氷の大陸になるにつれ、周辺の海水は冷やされて重くなって海底に沈み、沈んだ海水が深層水となって流れ始め、南極起源の冷たい深層海流が発生し始めました。
この深層海流は現在も続いていて、起点がグリーンランドと南極大陸であることでわかるように、零度に近い冷たい海水が流れています。
この深層水の大循環は2000年ほどかけて地球を一巡していることがわかりました。
南極はアルベド効果と冷たい海流循環を通じて地球全体を冷やす、ラジエーターの役割を果たすようになりました。
冷たい海水のほうが大気中の二酸化炭素を多く吸収しますので、これによって温室効果が減少し、さらに地球は寒冷化することになりました。
このようなことが重なって、5500万年前から3300万年前の間に地球の平均気温が10~20度以上も低下しました。